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アニサキスを食べてしまった時の対処法は?症状は自然治癒する?

生魚や刺身を食べた後の激痛・強い腹痛にお悩みの方へ。その痛みの正体は魚に潜む「アニサキス」という寄生虫かもしれません!
アニサキスは通常、生魚を食べてしまった後、4時間後くらいにみぞおちに激痛を感じるため、すぐにクリニックを受診するのがおススメです。
しかし、もし痛みを我慢して放置したら症状は自然治癒するのでしょうか。
いつまでアニサキスの症状が続くか不安になりますよね?
また、熱いお茶がアニサキスに効くという話がありますが、本当なのでしょうか?
今回はアニサキスを食べてしまった時の対処法や、症状の経過を含めアニサキスの疑問を徹底解説したいと思います。
(この記事は日本消化器病学会・消化器病専門医の中村孝彦医師が執筆しています)

「魚が好きな人は、何回もアニサキスにかかることもあります」

アニサキスを食べてしまった時の対処法は?


生魚・刺身にひそんでいるアニサキスをうっかり食べてしまったらどうなってしまうのでしょうか。
アニサキスは胃にすむ寄生虫の一種です。アニサキスの幼虫は全長2cm、幅1mmの細長くてまるで白いミミズのようにみえる形をしています。
アニサキスは私たちが普段よく食べるサバやイワシ、サンマ、アジなどの魚介類の内臓に寄生しています。
寄生している魚が死ぬとアニサキスは内臓から筋肉に移動して住み着きます。
お刺身がすきな人は多いですよね。
暑い夏にビールを片手に持ちながら食べるお刺身は格別ですよね。
しかし、ここに罠がひそんでいます。
アニサキスの幼虫が寄生している魚を生で食べると、アニサキスが魚の筋肉から、人間の胃の壁に移動します。
さらに人の胃の壁に食らいつくことで、強いみぞおちの痛みを感じます。
痛みの症状には個人差がありますが、思わずうずくまってしまうほどの激痛を感じることもあります。
アニサキスは人の胃液によって死んでしまうため、長く生きることはできません。
アニサキスの生存期間は長くても4日程度です。
しかし、たとえアニサキス自体が死んだとしても、痛みの症状である「アニサキス症」はおこります。
なぜかというと、アニサキス症は、アニサキスによる直接的な痛みというよりも、胃に食らいつくことで発症するアレルギー反応で生じる痛みだからです。
アニサキス症は同時に急性胃炎を合併していることが多いので、急性胃炎の治療も同時に行うことがあります。
このアニサキス症が重症化すると、強い痛みを引き起こすだけでなく、腸閉塞を引き起こすこともあります。
アニサキスが胃に食らいついてからアニサキス症をおこすまでは数時間から半日程度といわれています。
生魚のお刺身など食べた後に強いみぞおちの痛みがある場合は、アニサキスによるアニサキス症かもしれません。
疑った場合は、すぐにクリニックを受診しましょう。緊急の内視鏡検査(胃カメラ)を行い、内視鏡観察下にアニサキスを摘除する必要があります。
さらに、抗アレルギー剤などの薬を使うことでアレルギー反応であるアニサキス症の治療を行います。

胃以外にもアニサキス!?



アニサキス症といえば、胃に食らいついて発症する胃アニサキス症が有名ですが、実は腸にアニサキスが食らいついて発症する腸アニサキス症というものも存在します。
これは病態は同じですが、口から侵入したアニサキスが、口から食道、胃、腸へと流れていく中で流れ着いた場所による分類といえます。
胃アニサキス症は主に食べた後、2-3時間、まれに1日後くらいに、みぞおちに強い痛みを感じることで発症します。
嘔気、嘔吐や胸のむかつきを伴うこともあります。
一方、腸アニサキス症の場合は、口から腸に流れ着いて腸の壁に食らいつくまでに時間差があるため、食後1日から2-3日後に、強い下っ腹の痛みを感じます。
重症化すると腹膜というお腹を包んでいる薄い膜に炎症がおこり、嘔吐、発熱、頻脈などが現れ、最悪のケースだと腸閉塞や腸穿孔を引き起こす場合もあります。
先ほど、アニサキスによる症状は、アニサキスが胃や腸の壁に食らいつくことで直接的におこる痛みではなく、アレルギー反応による痛みだと説明しましたが、痛みではなく蕁麻疹などのアレルギー症状をおこす患者さんもいます。
これも重症化すると血圧が下がったり、意識がなくなったりするアナフィラキシーショックを引き起こすことになります。
腸アニサキス症の診断や治療は大腸内視鏡検査で行うことになります。

アニサキスはどうやって診断するの?



アニサキス症による診断は、問診・触診と採血さらに内視鏡やCTで行われることが一般的です。
まず、問診で生魚の摂取歴などを聴取します。触診で痛みの場所や合併症である腹膜炎の有無を診断します。
さらに採血で炎症反応や、好酸球などのアレルギーの値を確認します。
CT検査は、アニサキス症による胃の壁や腸の壁の肥厚をみることでアニサキスが食らいついている場所を推定することに役立ちます。
また、腹膜炎や腸穿孔、腸閉塞などの合併症や他の疾患との鑑別に用いられます。
最終診断としては、内視鏡(胃カメラや大腸内視鏡検査)で直接アニサキス虫体を確認することになります。内視鏡は診断と同時に治療を行えるため、極めて有用といえます。

 

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アニサキスは胃カメラで治療できる!



アニサキスに対する治療の第一選択は内視鏡治療と、抗アレルギー薬の投与があります。
よく使われる抗アレルギー薬としてはH1ブロッカーといわれるポララミン、またH2ブロッカーとして使われるガスターがあります。
アニサキスによる痛みでクリニックや病院を受診すると、問診や触診、採血を行って診断を推測すると内視鏡を行います。
内視鏡により診断と摘除(治療)を行った後に、ポララミンやガスターの点滴を行うことが多いでしょう。
実際に胃カメラでどうやって治療するのでしょうか。
アニサキスと推測すると、まず内視鏡に透明フードといわれるアタッチメントをつけます。これは透明の筒のようなもので内視鏡の先端につけることができるものです。
その後、胃の中にカメラを挿入し、アニサキスを探します。
多くの場合、アニサキスにかかっている胃は、発赤して強くむくんでいることが多く、しばしばアニサキスの捜索に難航します。
なにしろアニサキスは胃の中に身体をもぐりこませているため、胃の中に突出している部分はせいぜい1cm程度ですし、身体の色も透明からやや白みがかっている程度です。
しかし、アニサキスが食らいついている胃の粘膜は特に赤みが強く、胃の壁のむくみも強いので、そういった特徴に気を付けながら胃の中を観察し、アニサキスが食らいついている場所を特定します。
胃の中に同時に複数のアニサキスがいることも珍しくないので、一つのアニサキスを見つけたからといって安心せずに観察をします。
実際、私も同時に胃の中に3匹もアニサキスがいた患者さんを治療したこともあります。
いよいよアニサキスの摘除です。
アニサキス症はアレルギー反応のため、アニサキス虫体の身体ごと全てヒトの体外へと取り出す必要があります。
摘除は、生検鉗子といわれるものでアニサキス虫体をつまむのですが、尻尾をつかんで摘除しようとするとトカゲの尻尾きりのように尻尾だけ外れてしまいます。
アニサキスはその頭を胃の粘膜にもぐりこませているため、そのもぐりこんでいる胃の粘膜ごと生検鉗子でつまんで、胃の粘膜と一緒に体外へと摘除します。
つまむ胃の粘膜は少量のため、摘除に伴う痛みなどはありません。
虫体を摘除して、抗アレルギー薬の投与を行うと症状はずいぶんと軽くなり、通常数日以内に症状は完全に消失します。
アニサキス症の症状は、ピロリ菌による急性胃炎などとも症状が紛らわしいことがあるので、検査で一緒に調べることもあります。

 

アニサキスは放置で症状は自然治癒する?



アニサキス症は、生魚を食べた後、4-8時間後にみぞおちの差し込むような激痛を感じることで発症することが多いので、通常はすぐにクリニックを受診したりすることがほとんどです。
しかし、症状があまり強くない方などで、もしアニサキスを放置したらどうなるのでしょうか。
結論から申し上げると、アニサキスは放置しても人間の体の中では生きられないので、4-5日でアニサキスは死んでしまいます。
アニサキス症の痛みは、体がアニサキスを排除しようとするアレルギー反応によるものなので、アニサキスが死ぬと自然と痛みも治まります。
つまり、もし仮に痛みを我慢して放置しても症状は4-5日で自然治癒します。
しかし、アニサキスによるアナフィラキシーショックで蕁麻疹や呼吸困難、最悪の場合には命に関わることもあるので、生魚を食べた4-8時間後に痛みを感じたときは速やかに医療機関を受診するのが良いでしょう。
アニサキスは胃カメラで直接虫体を取り出せば、速やかに痛みが治まり、適切な治療を施せば日帰りで治療できる病気です。
放置せずに、疑った段階でクリニックや病院を受診するのが無難といえます。

アニサキスの予防は熱いお茶や正露丸?




ここまで読んでくださった方は、次はアニサキスの予防が気になりますよね。
民間療法として、「熱いお茶」や「正露丸」が予防や治療になる、とうたっている記事もありますが危険です。
どちらも正規の医療機関では行っていない治療のため、「熱いお茶」や「正露丸」をうのみにしてはいけません。
むしろ、熱いお茶を飲み続けることで発癌リスクが高くなることが知られてます。
温度が60度以上の熱い茶を1日に700ml以上飲むことで食道がんを発症する可能性が90%増加することが報告されています。
予防に最も効果的なのは、生魚を食べるのを避けることです。
アニサキスは加熱(60℃で1分)や冷凍(-20℃で24 時間)で死滅するため、加熱・冷凍後に食べれば問題ありません。
冷凍したり熱を加えて料理することでアニサキス症の発症を防ぐことができるのです。
アニサキスは魚の内臓に寄生しており、常温で生魚を放置するとアニサキスが内蔵から筋肉へと移りやすくなります。
スーパーなどで魚を買うときには、できるだけ新鮮なものを選びましょう。
魚を買ったあとは、すぐに内臓を取り除いて冷蔵庫などで保存することがポイントです。
そうはいっても、天然の魚を生で食べたいという方は多いと思います。
アニサキス症の原因となる生魚としてはサバが最も多いとされます。
シメサバなどで使われるお酢や醤油、わさび程度ではアニサキスは死滅なないため注意しましょう。
アニサキスの大きさは長さ3mm、幅は1 mm程度のため、人間の目で見ることができます。
刺身などを食べる時は、白色の糸のように見えるアニサキスがいないことを目視で確認することが重要です。
アニサキス症は日本で毎年1,000例ほど発症しているといわれていますが、病院を受診していない人や、報告に上がっていない例も多いと思われるため、実際の発症数はさらに多いと推察されるため要注意です。

 

まとめ


いかがでしたでしょうか。今回のコラムではアニサキスについてご紹介しました。
アニサキスを知らなかった方、魚を食べた後にお腹が痛くなって不安になった方にとって参考になれば幸いです。
大阪の堺なかむら総合クリニックでは、アニサキス症の治療を積極的に行っています。
アニサキスが気になる方は、大阪の堺なかむら総合クリニックにお気軽にご相談ください。

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「生の青魚には気をつけましょう」