お腹の違和感・吐き気・張りの原因は?

お腹の違和感・吐き気・張りなど腹部の症状でお困りの方へ。

 

漠然としたお腹の違和感のため何科を受診すればいいのか分からない方と思います。

 

今回は、これらについて、どこよりも分かりやすく専門医が解説していきます。

 

それでは早速どうぞ!

(本稿は日本消化器病学会・消化器病専門医の中村孝彦医師・中村玲佳医師が執筆しています。)

 

「気になるお腹の違和感について徹底的に解説します」

 

目次】


1.お腹の違和感があるときは何科を受診したらいい?

2.お腹の上の方に違和感があるときに考えられる原因は?

3.お腹の下の方に違和感があるときに考えられる原因は?

4.生理前のお腹の違和感の特徴は?

5.妊娠初期のお腹の違和感の特徴は?

1.お腹の違和感がある時は何科を受診したらいい?


お腹の違和感を感じた時は何科を受診したらいいのでしょうか?

 

お腹の違和感には様々なものがあります。生活習慣の乱れや薬の副作用の他、背景に治療の必要がある病気があることがあります。

 

生活習慣の乱れとしてまず考えられるのは、暴飲暴食や、お酒やコーヒー、香辛料、人工甘味料といった刺激物の過剰摂取です。

 

熱い飲み物や、冷たい飲み物を摂りすぎることも胃腸に負担がかかります。

 

これらによって胃腸機能の乱れや、腸内細菌叢のバランスが崩れることによる腸管ガスの産生がおこり、お腹の違和感が生じます。

 

また、胃腸の食事や便を送り出す働き(蠕動運動)や消化液の分泌は自律神経によって支えられているのですが、ストレスや睡眠不足によって交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、この蠕動運動や消化液の分泌がうまくいかずに消化不良を起こします。

 

生活習慣の乱れによるお腹の違和感は、軽く一時的なことが多いです。

 

数時間から半日様子をみたときに、お腹の違和感からお腹の張りや痛みに変わり、どんどん増強するようなら、次の項から述べる疾患が隠れている可能性がありますので医療機関の受診が必要です。

 

診療科としては、まずは消化器内科のクリニックに受診して相談するのがよいでしょう。

 

また、もし直近(およそ1ヶ月以内)に、新しい薬やサプリメントの内服を開始しているなら、薬の副作用かもしれません。

 

お腹の違和感は、どの薬、サプリメントでも副作用として出現する可能性があるので、薬なら処方元のクリニックに確認、サプリメントなら服用中止を考えましょう。

 

2. お腹の上の方に違和感があるときに考えられる原因は?


お腹の違和感といっても、お腹は広いのでお腹の部位によっても考えられる病気の原因は異なります。

 

まず、お腹の上の方、つまりみぞおちからお臍くらいまでに違和感があるときの原因について考えていきます。

 

お腹の上の方にある臓器は、食道と胃、十二指腸、そして胆嚢と膵臓です。

 

逆流性食道炎

食道に生じるお腹の違和感を感じやすい病気は逆流性食道炎です。

 

逆流性食道炎はお酒やコーヒー、香辛料といった刺激物をとること胃酸が過剰に分泌されて胃から食道に酸が上がってくる病気です。

 

食道と胃のつなぎ目にある下部食道括約筋がゆるんでしまう食道裂孔ヘルニアが逆流性食道炎の原因になることも多いです。

 

胃酸が過剰になると食道だけでなく十二指腸の方にも流入し、十二指腸炎という病気を引き起こすこともあります。

 

逆流性食道炎では、お腹の上の方の違和感のほかに胸焼けや、酸が上がってくる感じ、ゲップなどの症状がおこることも多いです。

 

また、逆流性食道炎は、ご飯を送る機能である蠕動運動の機能が悪くなる「機能性ディスペプシア」という病気と症状が似ています。両者の正確な診断は胃カメラで行います。

 

胃・十二指腸潰瘍

胃や十二指腸に生じる病気で特に注意したい病気は胃・十二指腸潰瘍です。

 

胃・十二指腸潰瘍は、主にヘリコバクターピロリ菌の感染によって、胃や十二指腸の粘膜の保護因子のバランスが崩壊して潰瘍ができる病気です。

 

潰瘍とは粘膜などの組織表面が傷つくことで、組織が部分的に欠損してホラ穴ができた状態を指します。

 

胃・十二指腸潰瘍では、初めはお腹の上部の違和感から発症し、徐々に胸焼けやお腹の張りを自覚し、悪化して穴があくとみぞおちの強い痛みや、潰瘍からの出血により吐血、血便を生じます。

 

ピロリ菌の感染以外にも、痛み止めとしてよく使われるロキソニンなどのNSAIDsとよばれる種類の痛み止めも胃・十二指腸潰瘍の原因になります。

 

悪化する前のお腹の違和感の段階で病院を受診することが大切です。

 

胆嚢炎

胆嚢炎は、胆嚢という臓器が炎症を起こす病気です。

 

胆嚢は、主に脂肪を分解・消化する消化液である胆汁を一時的に貯めておく袋のような役割をしています。

 

胆嚢炎の主な原因は、胆石と呼ばれる小さな結石が胆嚢内にできることと、胆嚢内に細菌が感染することです。

 

胆石は、胆嚢の出口を塞いでしまうことがあります。これにより胆汁が詰まってしまい、胆嚢が炎症を起こすのです。また、細菌が胆嚢に入り込んで感染を引き起こすこともあります。

 

胆嚢炎の初期症状は、上腹部の違和感や不快感、吐き気、食欲不振で、進行すると右季肋部(右の肋骨の下あたりの腹部)の痛みが発生します。

 

食後に痛みが強くなることがあるのが特徴で、深く息を吸っても痛くなることもあります。

 

診断には、血液検査や超音波検査などの画像検査が使われます。治療には、抗生剤の点滴療法や食事制限を行いますが、最終的には手術が必要なことが多い病気です。

 

膵炎

膵炎は、膵臓という臓器が炎症を起こす病気です。

 

膵臓は、背骨の後ろに位置し、主にタンパク質や脂質を消化する酵素を分泌する役割を果たしています。

 

また、膵臓はインスリンというホルモンも分泌し、血糖値の調節にも重要です。

 

膵炎の主な原因は、アルコールの過剰摂取と胆石です。

 

長期間にわたって多くのアルコールを摂取すると、膵臓の組織が傷つき、炎症が引き起こされることがあります。

 

また、胆管にできた結石が、胆汁の流れを妨げることで、胆汁が膵臓に逆流して炎症を引き起こすことがあります。

 

膵炎の初期症状は、上腹部の違和感や吐き気ですが、進行すると激しい腹痛、嘔吐、脂肪便などが見られることがあります。

 

膵炎の診断は、血液検査、超音波検査、CTスキャン、MRIなどの画像検査が行われます。

 

治療は、アルコールを避け、栄養療法などを行いますが、入院治療が必要になることが多いです。

 

膵炎は、早期に治療することが重要であり、放置すると合併症を引き起こす可能性があるため、症状がある場合は早めに医師の診断と適切な治療を受けるようにしましょう。特に、アルコール摂取に注意し、予防に努めることが重要です。

中村診療所【診療案内】

 

3.お腹の下の方に違和感があるときに考えられる原因は?


お腹の下の方にある臓器としては、小腸や大腸があります。

 

お腹の下の方に違和感があるときに考えられる原因として便秘症、腸閉塞、大腸憩室症、過敏性腸症候群などがあります。

 

便秘症

便秘症は、排便が困難で不規則であり、便が通常よりも少ない、硬い、または乾燥している状態を指します。通常、3日以上便通がない場合や、排便が痛くて困難な場合に便秘と診断されます。

 

便秘の状態では、腹部に不快感や膨満感を感じることがあり、便意を感じても排便がなかなか始まらなかったり、排便するのに時間がかかることがあります。

 

便秘の原因はまず、食物繊維不足や水分不足、野菜や果物の摂取不足が便秘を引き起こすきっかけになります。

 

さらに運動不足や座ったままの生活が腸の動きを鈍らせます。

 

さらに、ストレスや不安などの精神的な要因も便秘を悪化させることがあります。

 

他に一部の薬物や鎮痛剤、抗うつ薬などが便秘の原因になることがあるため、1ヵ月以内に新しい薬が処方された方は医師に相談しましょう。

 

便秘症を改善するためには、食物繊維を豊富に含む野菜、果物、全粒穀物を摂取し、十分な水分を摂るように心掛けましょう。

 

また、日常的な運動、特にウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を取り入れることで腸の動きが活発になります。

 

食事や運動、さらに十分な睡眠などの生活習慣の見直しでも改善がない場合はお薬を使った治療の適応になるので医療機関を受診しましょう。

 

また、便秘症の原因として大腸癌や大腸ポリープが隠れていることがあるので、長引く便秘がある方は医師に相談しましょう。

 

腸閉塞

腸閉塞(ちょうへいそく)は、消化器官の一部または全体が塞がれて、消化物や便が通過できなくなる状態を指します。

 

腸閉塞の主な原因として、腸内にできた癌やポリープが腸を塞ぐ場合と、便秘があります。

 

便秘による腸閉塞は糞便性腸閉塞とも言われますが、高度な便秘によって硬くなった便が腸の流れを邪魔することで詰まって閉塞を引き起こすことがあります。

 

腸閉塞の症状はお腹の違和感から始まり、腹痛や吐き気、嘔吐が見られることがあります。

 

また、便が通らないため、何日も便が出ない状態になり腹部の膨満感が出ます。

 

軽度の腸閉塞では入院して絶食や点滴療法、薬物療法などが行われます。

 

一方、進行した重度の腸閉塞では、手術によって閉塞部分を取り除いたり、腸を解放したりする必要があります。

 

大腸憩室症
大腸憩室症は、大腸の壁に「憩室」という小さな袋状の突出物ができる疾患です。

 

これらの憩室は大腸のどこにでも生じるのですが、特に大腸の右下腹部~右側腹部に存在する上行結腸という部位と、大腸の左下腹部に存在するS状結腸という部位によく見られます。

 

憩室が形成される原因は、大腸の圧力が高まることによって腸の壁が弱くなるためです。

 

お腹の違和感は、大腸憩室症の一般的な症状の1つです。

 

憩室が大きくなると、その内部に便がたまりやすくなり、そこで便が停滞したり、感染を起こしたりする可能性があります。

 

これにより、お腹の不快感や膨満感、便秘が生じます。

 

また、憩室に便が詰まったり、炎症を起こしたりすると腹痛が起こったり(大腸憩室炎)、腸の壁を傷つけることで出血(憩室出血)することがあります。

 

大腸憩室症の症状は人によって異なり、症状の程度も憩室の数と大きさによって変わることがあります。軽度の場合、症状がほとんどなくて気づかないこともありますが、重症な場合は合併症を引き起こす可能性があります。

 

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群は、腸の機能の異常により、腸の動きに影響を与える小腸や大腸の障害で内臓過敏症候群の一つです。

 

過敏性腸症候群の症状の特徴として①腹痛と不快感、②便秘や下痢を繰り返す、③腹部膨満感とガスが増えるのを感じることが挙げられます。

 

また、便に形やサイズに異常が見られることがあり、小さくてコロコロした便が出ることもあれば、長く細長い便が出ることもあります。

 

過敏性腸症候群の原因としてストレスや食事の変化、腸の運動に関与する神経やホルモンの異常、腸内細菌のバランスの変化などが影響していると考えられています。

 

治療はまずは食事内容を見直して、食物繊維や脂肪の摂取量を調整し、お酒・コーヒー・香辛料・熱すぎるものや冷たすぎるものなどの刺激物を避けることが基本です。

 

また、軽いウォーキングやジョギングを習慣化するなど有酸素運動を中心にストレスコントロールを行うのも効果的です。

 

過敏性腸症候群は生活の質(QOL)を著しく下げるので食事や運動習慣を改善しても症状が続くようなら医療機関を受診して薬物療法を中心とした治療を受けることが大切です。

中村診療所【診療案内】

 

4.生理前のお腹の違和感の特徴は?


生理前のお腹の違和感は、女性によって異なる場合がありますが、一般的には以下のような特徴が挙げられます:

 

・腹部の膨らみ:生理前には、子宮や卵巣の周りの組織に水分が溜まることがあり、それによって腹部が膨らむ感じがすることがあります。

 

・重だるさ:生理前のホルモンの変化によって、体が軽い疲労感や重だるさを感じることがあります。

 

・腹痛・痛み:生理前には子宮が収縮して痛みを感じることがあるため、お腹の下部や腰回りに痛みを感じることがあります。

 

・胸の張り:生理前に乳房の周囲の組織が腫れることがあり、胸の張りや痛みを感じることがあります。

 

・不快感:ホルモンの変化によって、生理前には気分の落ち込みやイライラなどの不快感を感じることがあります。

 

これらの症状は、生理前症候群(PMS)として知られており、多くの女性が生理周期とともにこれらの症状を経験しています。

 

ただし、個人差が大きく、症状の強さや種類は人によって異なるため、思い込まずに普段と違う変化を感じた場合は医師に相談することが重要です。

5.妊娠初期のお腹の違和感の特徴は?


妊娠初期のお腹の違和感は、妊娠による身体の変化によって引き起こされる症状です。

 

・腹部の膨らみ:妊娠初期には、子宮が拡大して赤ちゃんが成長するため、腹部に膨らみを感じることがあります。ただし、初期の段階では他の要因(ガスや便秘など)による腹部の膨らみとの区別が難しいこともあります。

 

・軽い痛みや引っ張り感:子宮の拡大に伴い、周囲の靭帯や筋肉に引っ張られる感じを感じることがあります。これは「靭帯痛」と呼ばれることがあります。

 

・お腹の張り:妊娠初期には、子宮の筋肉が緊張してお腹が張ることがあります。

・吐き気や胃もたれ:妊娠初期には、ホルモンの変化により吐き気や胃もたれを感じることがあります。

 

これらの症状は個人差があり、全ての女性が必ず経験するわけではありません。妊娠初期に感じる違和感は、人によって異なるため、心配な場合は医師に相談することが大切です。特に、出血や強い腹痛、体調の急な変化などがある場合は、直ちに婦人科を受診することをお勧めします。

 


いかがでしたでしょうか。

このようにお腹の違和感を引き起こす原因には様々なものがあり、原因によって治療法が異なります。

 

入院治療が必要になる可能性のある胆嚢炎、大腸憩室炎といった病気でも初めはお腹の違和感から始まることが多いです。

 

女性の方で生理周期に合ったお腹の違和感が続いていたり、妊娠に心当たりのある方は必ず婦人科に受診してください。

 

数時間様子をみても改善がない、症状がひどくなってくる、といった症状があれば、まずは医療機関に相談しましょう。

 

お腹の違和感でお困りの方は、大阪の中村診療所・内視鏡内科にお気軽にご相談ください。

中村診療所【診療案内】

「お腹の違和感でお困りの方は大阪の中村診療所・内視鏡内科にお任せください。」

 

この記事を書いた人

Dr.Taka|中村 孝彦 医師
Dr.Taka|中村 孝彦 医師中村診療所・内視鏡内科 副院長
消化器病専門医|消化器内視鏡専門医|認定内科医

大阪大学医学部卒。住友病院、JCHO大阪病院を経て、大阪国際がんセンターで消化器癌の内視鏡手術を担当。現在、下剤を飲まない大腸検査・無痛内視鏡を行う中村診療所副院長。「抗血栓薬の特徴と内視鏡時の対応:エキスパートに学ぶ安全で楽な外来内視鏡」など著書・論文多数。

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