【大腸癌ステージ4の平均余命(生存率)は?】完治する確率は?

一口に大腸癌といっても様々な病状の患者さんがおられます。

 

大腸癌の進行度を表すものの一つが「ステージ」という分類です。

 

大腸癌の進行度は、ステージ0からステージ4の5段階に分かれます。

 

今回はこのうち「大腸癌ステージ4」について、平均余命(生存率)や完治する確率なども含めて分かりやすくブログで解説していきたいと思います。

 

こんにちは。中村診療所なかむら内視鏡センターのDr.くまです。

 

大阪の中村診療所・なかむら内視鏡センターではクリニックに隣接したシニア向け住宅への在宅診療を医師3人体制で行っています。また、女性医師が常勤しており下剤を飲まない胃・大腸カメラなど、大腸癌予防の大腸内視鏡検査を行っています。

 

さて、今回のブログは大腸癌ステージ4のお話です。

 

ステージ4というと、どういうイメージでしょうか?

 

「最終ステージ」「助からない」「余命宣告」

 

ネガティブなイメージが強いかと思います。

 

もちろん、ステージ4は大腸癌の進行度分類での最後のステージであることは間違いなく、厳しい病状であることは否めません。

 

しかし、この10年の抗がん剤治療の驚くべき進歩により、生存率(余命)が劇的に伸びているのも事実です。

 

それに伴い大腸癌ステージ4が抗がん剤で縮小して外科手術ができる方もおられます。

 

大腸癌ステージ4が完治することは、ありえるのでしょうか?

 

大腸癌ステージ4の平均余命(生存率)や、完治する確率について科学的根拠に基づいて詳しく解説していきたいと思います。

 

それではどうぞ!

「抗がん剤治療の進歩により大腸癌ステージ4の5年生存率は劇的に伸びている!?」

 

【ブログ目次】


1.大腸癌ステージ4の平均余命(生存率)は?

2.大腸癌の転移はどこが多い?

3.大腸癌ステージ4が完治する確率は?

4.大腸癌ステージ4の症状は?

5.大腸癌ステージ4の抗がん剤について教えて!

6.大腸癌の緩和ケアは?

1.大腸癌ステージ4の平均余命(生存率)は?


ドラマなどを見ていると、医師が余命宣告をする場面がよくあると思います。

 

しかし、実は、医師が患者さんに

 

「あなたの余命は何年です」

 

などという余命宣告をすることは、まずありません。

 

個々の患者さんの年齢や体力、病状は本当に様々なため、1年なのか、1年3か月なのか、1年半なのか、と正確な予後を推定することは難しいですし、もしそれが分かったとしても患者さんにお伝えすることはありません。

 

しかし、同じステージの人が、その癌のステージと診断されたてから5年後に何%生存しているかという多数の患者さんを対象としたデータはあります。

 

これを5年生存率といいます。

 

大腸癌研究会の合計24,336人の患者さんを対象とした全国登録(2000年~2007年登録症例)によると、大腸癌のステージごとの5年生存率は以下の通りです。

 

大腸癌のステージごとの5年生存率

ステージ1 93.0%
ステージ2 88.2%
ステージ3 78.5%
ステージ4 33.4%

 

大腸癌のステージの理解としては、

 

大腸癌のステージ分類

ステージ1 大腸癌が筋層(腸管の筋肉の層)までに留まっている
ステージ2 大腸癌が筋層をこえて広がっている。
ステージ3 リンパ節に転移している
ステージ4 遠隔転移している

 

と捉えて頂ければ概ねOKです。

 

このデータをみると、ステージ1→ステージ3は5年生存率が約9割から8割へと緩やかに低下しているのに対して、ステージ3→ステージ4は一気に8割から3割程度へと5年生存率が急落しているのが分かります。

 

やはりステージ4の5年生存率が、ステージ3までと比べてかなり悪い結果です。

 

しかし、過去のデータ(2000年~2004年登録症例)をみるとステージ4の5年生存率が14.8%~19.9%となっていますので、この数年でみても、ステージ4の生存率(余命)が飛躍的に改善していることがわかります。

 

これは、ひとえに、近年の抗がん剤治療(化学療法)の進歩に他なりません。

 

ちなみにJCOG 1007試験によると、ステージ4大腸癌の全生存期間(余命)の中央値は25.6~26.7ヶ月、つまり約2年となります。

 

ただし、ひとくくりにステージ4といっても様々な年齢、体力、病状の方が含まれているので、長い余命・短い余命、様々な方のデータの中央値が上記というふうにご理解ください。

 

このデータは中央値なのため、仮にステージ4と診断されても「じゃあ私の余命は2年か」とはならないので、医師がこの値を告げることは基本的にはないのです。

 

2.大腸癌の転移はどこが多い?


大腸癌の転移の場所はどこが多いのでしょうか。

 

同じ大腸癌研究会のデータによると、

 

大腸癌の転移の頻度

肝臓 11.4%
肺  2.8%
腹膜 4.6%
骨  0.3%
脳  0.1%

 

となっており、肝臓への転移が圧倒的に多いことが分かります。

 

ちなみにステージ1~3で手術で癌を切除した後に再発してステージ4と診断された場合、再発が多い場所は以下の通りです。

 

大腸癌の部位別の再発率

肝臓 7.1%
肺  5.5%
腹膜 2.0%

 

肝臓が再発部位としても1位になります。

3.大腸癌ステージ4が完治する確率は?


「大腸癌ステージ4で完治して生還することはありますか?」

 

患者さんからこういう質問をよく受けます。

 

癌の世界で「完治」とは、癌が取り残しなく完全に切除されかつ5年間以上経過して再発がないのを維持できている状態をさすので、ステージ4の方には表現としてあまり用いません。

 

しかし、ステージ4の方でも「根治切除(治癒切除)」を目指すことはできます。

 

根治切除(治癒切除)とは、手術中に人間の目で見える癌を全て切除することができ、かつ病理組織学的にも取り切れていることが確認できた状態です。

 

大腸癌ステージ4の方の場合、すでに肝臓などに遠隔転移があるので、まず抗がん剤治療(化学療法)を行ってから手術を行う形になります。

 

この抗がん剤治療や放射線治療などによって、切除不能と診断された癌が縮小することで、根治的な(治癒をめざす)外科手術を行えるようになるケースがあります。

 

この手術のことを「コンバージョン手術」といいます。

 

JCOG1007試験によると、この根治的なコンバージョン手術を行えた症例が3~5%存在することが報告されています。

これによって実際に5年以上の長期予後がえられる患者さんが一定数存在するのです。

 

もちろん、数の割合でいうと治癒切除がえられるケースはまだまだ稀なのですが、20年前には考えられなかったことが医学の進歩でおきているのです。

4.大腸癌ステージ4の症状は?


大腸癌ステージ4とは、癌細胞が転移して全身に広がっている状態なので、症状が出ることがほとんどです。

 

8割くらいの患者さんに症状が出るといわれています。

 

癌というと一般的には「痛い」というイメージをお持ちかもしれませんが、大腸癌ステージ4の症状は、そのほとんどが痛み以外の症状です。

 

転移するほどですから、まず大腸の原発巣もかなり腫瘍が大きくなり、大腸の壁をこえて広がっていることが多いので腹部腫瘤として自覚することもあります。

 

まず症状としてあるのが、この大腸の原発巣の症状です。

 

大腸の筋膜や、腹膜には神経が発達しているので、これに大腸癌が浸潤することによって、腹痛や腹部膨満感を生じることがあります。

 

また、大腸というのは、便を作り、腸の動きによって便を輸送して排泄する働きがあります。

 

大腸癌が大きくなることで、この腸の動きを妨げたり、物理的に便の通り道をふさいだりします。

 

それによって排便困難(便がでない)、便秘、吐き気がおきます。

 

また、癌というのは身体に炎症をおこす炎症物質を作るのですが、癌が全身に広がって腫瘍の量が増えると、全身の症状として食欲が落ちる、だるさなどを感じます。

5.大腸癌ステージ4の抗がん剤について教えて!


従来、大腸癌に対抗する抗がん剤としては、「細胞障害性抗がん剤」といわれる種類のものしかありませんでした。

 

「細胞障害性抗がん剤」とは、癌細胞が正常細胞と比べて細胞増殖が活発であることを利用して、細胞増殖の一部を阻害することで癌細胞を攻撃する薬です。

 

ただし、正常細胞も細胞増殖を行っているため、どうしても正常細胞にも障害が出るというデメリットがあります。

 

しかし、この10年で医学が飛躍的に進歩し、様々な種類の抗がん剤が登場し、癌治療の成績も劇的に良くなってきているのです。

 

ステージ4の大腸癌に対して、抗がん剤を使用しない場合、生存期間の中央値は8か月ですが、抗がん剤治療を行うことで生存期間の中央値は30か月(2年半)まで延長してきています。

 

この新しく登場した抗がん剤の代表格が「分子標的薬」と「免疫チェックポイント阻害薬」です。

「分子標的薬」とは、癌細胞の増殖に関わるタンパク質や、癌に栄養を運ぶ血管に関わるタンパク質だけをターゲットにしてがんを攻撃する薬です。

 

癌だけをターゲットにするので、より効率的に癌細胞を攻撃でき、正常細胞への影響も少ないとされます。

「免疫チェックポイント阻害薬」は、免疫の作用を活発化することで癌を攻撃する薬です。

 

癌細胞は人間の免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みを持っているのですが、これを阻害することで、人間の免疫細胞が癌細胞を発見し攻撃を活発にする薬です。

 

副作用は細胞障害性抗がん剤と比べると概ね少ないのですが、免疫を活性化することで、1型糖尿病や腸炎などの自己免疫性疾患を発症することがあります。

 

では、大腸癌ステージ4の抗がん剤を選択するときにはどういうプロセスを踏むのでしょうか。

まず、抗がん剤治療(化学療法)をすると決まった時点で、遺伝子検査を行います。

 

癌は、正常細胞から癌化するわけですが、その過程で様々な遺伝子変異をおこしています。

 

どういった遺伝子変異を生じているかで、抗がん剤の効き目が変わってくることが分かっているので、遺伝子検査を行うのです。

 

具体的には、MSI、RAS、BRAFなどの遺伝子を検査します。

 

MSIの遺伝子変異があれば、免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)という薬が使えます。

 

RASやBRAFの変異があれば、分子標的薬であるベバシズマブ(商品名:アバスチン)という薬が使えます。

 

また大腸は左側の腸(下行結腸から直腸)と右側の腸(盲腸から横行結腸)とは性質が違うことが知られており、大腸の左側の癌に対しては、分子標的薬であるセツキシマブ(商品名:アービタックス)やパニツムマブ(商品名:ベクティビックス)を使うことができます。

 

「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」は強力なのですが、従来の抗がん剤である「細胞障害性抗がん剤」と併用すると効果が高いことも多く、「細胞障害性抗がん剤」と組み合わせて使用するケースも多いです。

 

今後も抗がん剤治療はより進歩していくと考えられ、ステージ4でも完治を目指せる方が増えていくかもしれません。

6.大腸癌の緩和ケアは?


緩和ケア(緩和医療)とは、がん患者さんの症状緩和やQOLの向上を目的として治療・ケアのことです。

 

緩和ケアというと「終末期」というイメージかもしれませんが、癌治療の開始とともに、疼痛緩和などの緩和ケアを並行して行っていくという考え方が主流です。

 

緩和医療は疼痛緩和目的の薬物療法以外にも様々なものがあります。

 

例えば痛みの原因になっている原発巣や転移巣の外科手術や、大腸癌によって閉塞した腸を迂回して食べ物の通り道をつくるバイパス手術や人工肛門造設術などがあります。

 

骨に転移した場合は、そこに放射線をあてて疼痛緩和を図ることもあります。

 

また、大腸癌が尿管に浸潤して尿が出なくなった場合には尿管ステント留置術が行われます。

 

このように、現在では「緩和ケア=終末期」という考え方ではなく、薬物療法・外科手術・放射線療法など様々な手段を用いて、早期から疼痛緩和やQOL向上を行っていくのです。

【 まとめ 】


いかがでしたでしょうか。

 

今回は大腸癌のステージ4について詳しく解説しました。

 

大阪の中村診療所は、癌患者さんの在宅診療に力を入れています。

 

当院が運営する高齢者向け住宅「くぜのさと」は、中村診療所に隣接している施設で医師3名体制で在宅診療を行っています。

 

癌の緩和ケアはもちろん、内科・外科・整形外科・皮膚科など幅広い疾患に対応し、きめこまかな診療を行っています。

 

詳細はこちらです↓↓  お気軽にご相談ください。

中村診療所の運営するシニア向け住宅

 

また、中村診療所と連携する「なかむら内視鏡センター」では、大腸癌予防の「楽な大腸内視鏡検査」や、眠っている間に下剤を飲まずに同時に胃カメラと大腸内視鏡検査ができる、下剤を飲まない大腸内視鏡検査も行っています。

↓↓

 なかむら内視鏡センターの大腸内視鏡検査

 

■参考文献
・大腸癌治療ガイドライン2022年版
・治癒切除不能進行大腸癌に対する原発巣切除の意義に関するランダム化比較試験(JCOG1007, iPACS)