【胃がんの初期症状・前兆】をチェック!医師ブログ

テレビや雑誌などで胃がんについて特集されていたり、医師に「胃がんかもしれません」と言われたりするかもしれませんが、意外にその胃がんのことって詳しくなかったりしますよね。
おならや、げっぷ、下痢があって胃がんの症状じゃないかと不安でしょうか。
また、特に胃の痛みや不快感、違和感、胸やけ、吐き気、食欲の低下があったときは、胃がんの初期症状じゃないかと不安になりますよね。
このブログでは胃がんについて、わかりやすく説明したいと思います。
この記事を読めば、胃がんのことを知らなかった方、胃がんじゃないかと心配だった方でも、胃がんについて正しく理解し明日からのご自身のご健康にお役立て頂けます。
それではどうぞ!
(この記事は消化器病専門医の中村孝彦医師が執筆しています)
「胃がんは、男性のがん死因の2位!9人に1人診断されている怖い病気なのです!」
【ブログ目次】
1. 胃がんとは?ブログで医師解説!

進行胃がん
まず胃がんについて説明します。
胃の内側の粘膜から発生する癌のことを胃がんと呼んでいます。
胃がんのはじまりは細胞単位で発生するため人間の眼でみつけることはできません。
しかし、だんだんとその癌細胞が年月をかけて横に大きくなるとともに縦に深く拡がっていきます。
最初は胃の粘膜内を横に拡がりほかの臓器に転移することはありません。
ところが、それを放置しているとそのうちに横方向だけではなく縦方向、つまり胃壁の外側に向かって胃がんが広がっていきます。
縦方向に広がっていくと、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜へと広がり、ついには胃の壁から飛び出して膵臓や大腸などほかの臓器にまで広がっていきます。
2.胃がんの初期症状・前兆をチェック!
胃がんの初期の段階では初期症状・前兆が乏しく、また進行しても自覚症状が出ないという方もいらっしゃいます。
胃がんの主な症状は胃の痛みや不快感、違和感、胸やけ、吐き気、食欲の低下です。
がんが進み胃から出血をしていた場合には黒い色の便や吐血、貧血を起こすこともあります。
関連記事:【貧血症状の応急処置に良い食べ物】原因と対処を解説!
さらにがんが進んだ状態である進行がんでは、体重が非常に減少することがあります。
早期の胃がんは胃炎や胃潰瘍を疑って検査をした場合にたまたま発見されるということもあります。
進行がんの症状が出ている場合にはすぐに治療をする必要があるため、速やかにクリニックや病院を受診されることをおすすめします。
3.早期がん、進行がんの違いは?
粘膜、そして粘膜下層までに留まっている胃がんを早期胃がんと呼びます。
早期胃がんの場合は、多くのケースで内視鏡治療によって完治を見込めます。
一方、筋層よりも深く広がっている胃がんを進行胃がんと呼びます。
進行胃がんになると内視鏡治療は適応外となり、手術など他の治療の適応となります。
がんが縦方向に深く広がれば広がるほど転移する可能性が高くなります。
転移はがんがほかの臓器に飛び火することをさします。
4.よく聞く「転移」について詳しく教えて!
胃がんが胃粘膜内に留まっている場合は転移はほとんど起こりません。
しかし、胃がんが粘膜下層より深く広がると小さなリンパ管や血管にがん細胞が入り込んでリンパ節や肝臓などに飛び火することがあります。
転移する臓器としては①リンパ節 ②腹膜 ③肝臓 ④そのほかの臓器(これを遠隔転移とよびます)の順番に頻度が高くなります。
①リンパ節転移
リンパ節は全身のいたるところに存在します。
リンパ節には沢山のリンパ球とよばれる免疫細胞が存在し、細菌やウイルスなどの外敵の侵入を食い止める免疫の役目を果たしています。
リンパ節は胃の周囲にも多数存在しています。
がん細胞がリンパ管を通ってリンパ節に侵入して増えている状態をリンパ節転移と呼びます。胃の周りのリンパ節(第1群リンパ節)、胃の裏側と膵臓の周りのリンパ節(第2群リンパ節)までの転移であれば外科手術で切除できます。
しかし、大動脈周囲のリンパ節(第3群リンパ節)、遠くはなれたリンパ節(遠隔リンパ節)に転移しているときは外科手術の適応外となります。
②腹膜転移
胃がんが胃壁を深く広がって胃壁の外側の漿膜を越えていくとがん細胞がお腹の中に散らばった状態になります。
これを腹膜転移(または腹膜播種)とよびます。
がん細胞が大腸や小腸、大網(たいもう)や腹膜にくっついてそこでがん細胞が増殖する転移です。
この状態まで転移が進行すると腹水という水がお腹にたまったりします。
腹膜転移が進行すると、さらに様々な症状がでることがあり、例えば大腸や小腸に広がると腸閉塞などが生じることがあります。
③肝転移
胃から出て行く血流は門脈という太い血管を通って肝臓に流れ込みます。
この血流をつたってがん細胞が肝臓に流れていって肝臓で増殖して大きくなる転移を肝転移とよびます。
④遠隔転移
そのほか遠隔転移する臓器としては、肺、骨、髄膜、脳、皮膚などがあります。
女性では卵巣に転移することもあります。
早期胃がんの状態で見つけることができると、内視鏡治療などの適切な治療によって多くの場合治癒が可能です。
そのため、やはり早期発見、早期治療が重要です。
しかし、早期胃がんの状態ではほとんどの場合自覚症状は無いため、症状が無くても定期的な検査を受ける事が重要となります。
症状が出るのは進行がんになってからが多いので「私は症状がないので大丈夫」というのは、がんの世界では大間違いなのです。
5.お腹を切らない最新手術「内視鏡手術」!
一般的に胃癌の手術というと、お腹を切る外科手術をイメージされますよね。
ところで、お腹を切らない手術「内視鏡手術」があるのをご存知でしょうか?
内視鏡手術は、治療用の内視鏡から電気メスなどの器具を入れて病変部を切除する手術の方法です。
体への負担は外科手術よりも小さくなり、胃の機能も保たれるのが大きな特徴です。
対象となるのは、ステージIの早期がんの一部です。
ただし、ステージIでも内視鏡的切除の対象にならず、外科的手術を受ける人もいます。
内視鏡手術には、EMR(イーエムアール:内視鏡的粘膜切除術)とESD(イーエスディー:内視鏡的粘膜下層剥離術の略)の2つがあります。
EMRやESDの対象になるのは、主に粘膜内に留まっている悪性度の低いがんです。
このようながんはリンパ節に転移していることがほとんどないとされ、EMRやESDの良い適応とされます。
6.ワイヤーをかけて焼き切るEMR
内視鏡手術の具体的な方法について説明します。EMRは、まず生理食塩水などを病変の下の粘膜下層に注射して病変を浮き上がらせます。次に内視鏡の先端からスネアという輪っか状のワイヤーを出して浮き上がった病変を締め、高周波電流を流して病変を焼き切る方法です。
7.電気メスで切開するESD
ESDは、EMRと同様に病変を浮き上がらせた後、内視鏡先端から専用の電気メスを出して病変部分と粘膜下層を高周波電流で焼きながら切除する方法です。
8.EMRやESDって怖くないの?合併症は?
EMRやESDの主な合併症としては、出血と穿孔があります。
合併症の頻度は5%以下とされます。
穿孔は切除する場所の消化管壁に穴があいてしまうことです。
穿孔が起きてもすぐに閉じれば問題ありませんが、腹膜に炎症が起きると腹膜炎という状態になり、腹痛や発熱などを生じることがあります。
出血に関しては、切除中にみられる出血と切除後しばらくしてからみられる場合があります。
そのほとんどは内視鏡で止血することができますが、稀に輸血をしたり緊急手術が必要になることがあります。
仮に穿孔が起きても、内視鏡で穿孔部位を閉じることができますが、緊急の外科手術を必要とすることが稀にあります。
胃がんの初期症状【まとめ】
いかがでしたでしょうか。
今回のブログでは胃がんについてご紹介しました。
胃がんのことを知らなかった方、胃がんじゃないかと心配だった方にとって参考になれば幸いです。
胃がんも、遺伝子的に胃がんになりやすい方とそうでない方がいるので、御自身の親や家族が癌を患ったことのある方、癌家系の方は是非、検査を受けてみて下さい。
「胃がんは症状が出る前に胃カメラで早期発見することが大事なのです。」
この記事を書いた人

- 中村診療所・内視鏡内科 副院長
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消化器病専門医|認定内科医
大阪大学医学部卒。住友病院、JCHO大阪病院を経て、大阪国際がんセンターで消化器癌の内視鏡手術を担当。現在、下剤を飲まない大腸検査・無痛内視鏡を行う中村診療所副院長。「抗血栓薬の特徴と内視鏡時の対応:エキスパートに学ぶ安全で楽な外来内視鏡」など著書・論文多数。
『女性医師が常勤の当院は女性の方でも安心です。以下の地球マークのHPリンクから、お気軽にHPをご覧下さい!』
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