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胃が荒れる飲み物はお酒?コーヒー?症状や対処を専門医が解説!

「何となく胃のあたりが痛い」などの症状があったり、胃カメラやバリウム検査で「胃が荒れている」と医師に言われ不安な方へ。
胃が荒れる原因にはお酒やブラックコーヒーなどの飲み物の他、ロキソニンやバファリンなどの薬が原因になることもあります。
この記事を読めば、胃が荒れる症状や対処法について正しく理解し明日からのご自身のご健康にお役立て頂けます。
それではどうぞ!
(この記事は消化器病専門医の中村孝彦医師が執筆しています)

「私も空腹時にお酒やブラックコーヒーをいきなり飲むと胃が痛くなります」


胃が荒れる飲み物はお酒?コーヒー?


空腹時にお酒を飲んだりすると胃が痛くなることがあります。
特にアルコール度数の強いお酒になるとよりその傾向があります。
お酒には胃の粘膜を刺激して胃酸の分泌を増やす作用があります。
胃酸は食べ物を消化しやすくするために胃粘膜から分泌される強酸性の液体です。
通常、私たちの身体からは、強い胃酸から胃自体を守ってくれる粘液も同時に分泌されていますが、お酒の刺激で胃酸が多く分泌されると守る粘液とのバランスが崩れて粘膜が障害をうけます。
粘膜の障害は胃だけではなく、食道や十二指腸といった胃の周辺の臓器に及ぶこともあります。
結果として、胃が荒れる、胸焼けがするといった症状を引き起こすのです。

 

ブラックコーヒーなどを空腹時に飲むのも胃が荒れる原因となります。
コーヒーに含まれるカフェインにはお酒と同様に胃酸を増やす働きがあるためです。
お酒やコーヒーなどの刺激物を摂りすぎると胃が荒れて胃腸の調子が悪くなることがあります。
胃腸の調子が悪くなると口臭や下痢、肌荒れを引き起こすことがあるので要注意です。
胃が荒れる原因がお酒やコーヒーのせいだと思い込むのにも注意が必要です。
胃が荒れる原因となる病気には、ピロリ菌感染による胃炎や胃潰瘍、さらに次項以降で述べる胃がんが隠れている可能性もあります。

 

 

ロキソニンなどの薬で胃が荒れる?


痛み止めとしてよく用いられるロキソニンなどの薬を頻繁に飲むことで胃が荒れやすくなることが知られています。
ロキソニンはNSAIDs(エヌセイド)と呼ばれる種類の痛め止めの薬になります。
胃荒れの予防薬などを併用せずにNSAIDsだけを服用していると、10~15%程度の頻度で胃が荒れて胃潰瘍を起こすと報告されています(消化性潰瘍診療ガイドライン2015(改定第2版))
NSAIDsによって胃が荒れるメカニズムとして大きく以下の2つがあります。

①胃粘膜に対して保護的に作用しているプロスタグランジンという物質の産生を阻害する
②胃という酸性条件下で薬がイオン化し、胃粘膜細胞を直接障害する

ではロキソニンなどの痛み止めで胃が荒れやすい人はどうすれば良いのでしょうか。
まず、①を防ぐためには予防薬をNSAIDsと一緒に内服することです。
保険適用のあるものとしては、PPI(プロトンポンプ阻害薬)やプロスタグランジン製剤が用いられますが、主に副作用の少なさから現場ではPPIの方がよく用いられている傾向にあります。
次に②を防ぐためにはロキソニンなどのNSAIDsと胃粘膜が物理的に接触することをできるだけ避ければよいことになります。
具体的には、お腹が空っぽのときは薬と胃が直接、接触しやすいので、痛み止めを飲むときには空腹時を避けて服用する。
あるいは薬を飲むときは多めの水と一緒に服用したりといった対処によって、胃が荒れるのを防ぐことができることになります。

胃が荒れる時の症状と考えられる病気は?


胃が荒れると、胃もたれや、ゲップ、吐き気、食欲が出ない、お腹が張る、などの症状が出ます。
症状がひどくなると、えづきが止まらなくなったり、みぞおちの痛みで夜目が覚めてしまったり、痰に血が混じったりします。
これまで述べたお酒やコーヒーといった飲み物や、ロキソニンなどの痛み止めの薬以外に、胃が荒れている時に考えられる病気には以下のようなものがあります。
①胃炎(急性胃炎・慢性胃炎)
②胃潰瘍
③胃がん

胃炎(急性胃炎・慢性胃炎)
胃炎はお酒や薬の他にも、食事やピロリ菌の感染、ストレスなど様々な原因によって、胃の粘膜保護因子が低下して胃の粘膜に炎症が生じる状態です。
胃炎には急性胃炎と慢性胃炎があります。
急性胃炎は突然急に胃の粘膜に炎症がおこる状態で、炭水化物を中心とした素うどんやおかゆ、豆腐や白身魚といった消化に良い食事を摂っていると数日から1週間くらいで軽快します。
炎症が軽快せずに長期間にわたると、慢性胃炎とよばれる状態になります。
慢性胃炎は別名、萎縮性胃炎ともいわれますが、ピロリ菌感染が主な原因になります。

胃潰瘍
胃潰瘍では胃酸と胃粘膜の保護因子のバランスが崩れて、胃の粘膜がただれて胃に穴が空いてしまう病気です。
通常、胃は胃酸から胃の粘膜を保護する粘液によって表面が守られているのですが、ピロリ菌感染やストレス、お酒、コーヒー、たばこ、熱いものや辛いものの過剰な接種によって胃酸と粘液のバランスが崩れて胃潰瘍を発症します。
初期の胃潰瘍は、胃が荒れた感じ、胃もたれ、胃の不快感といった症状が出ますが、悪化するとみぞおちの強い痛みや、吐血、黒い便が出たりします。

胃がん

胃がんは、ごく初期のものだと症状が出ないのですが進行すると、胃が荒れた感じ、胃もたれや吐き気、お腹の痛み、食欲の低下などがおこります。
胃の内側の粘膜から発生する癌のことを胃がんと呼んでいます。
胃がんのはじまりは細胞単位で発生するため人間の眼でみつけることはできません。
しかし、だんだんとその癌細胞が年月をかけて横に大きくなるとともに縦に深く拡がっていきます。
最初は胃の粘膜内を横に拡がりほかの臓器に転移することはありません。
ところが、それを放置しているとそのうちに横方向だけではなく縦方向、つまり胃壁の外側に向かって胃がんが広がっていきます。
縦方向に広がっていくと、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜へと広がり、ついには胃の壁から飛び出して膵臓や大腸などほかの臓器にまで広がっていきます。

胃がんの初期症状・前兆をチェック!


胃がんの初期の段階では初期症状・前兆が乏しく、また進行しても自覚症状が出ないという方もいらっしゃいます。
胃がんの主な症状は胃の痛みや不快感、違和感、胸やけ、吐き気、食欲の低下です。
がんが進み胃から出血をしていた場合には黒い色の便や吐血、貧血を起こすこともあります。
関連記事:【貧血症状の応急処置に良い食べ物】原因と対処を解説!
さらにがんが進んだ状態である進行がんでは、体重が非常に減少することがあります。
関連記事:【体重減少】病気の原因はがん?何科で検査?
早期の胃がんは胃炎や胃潰瘍を疑って検査をした場合にたまたま発見されるということもあります。
進行がんの症状が出ている場合にはすぐに治療をする必要があるため、速やかにクリニックや病院を受診されることをおすすめします。

粘膜、そして粘膜下層までに留まっている胃がんを早期胃がんと呼びます。
早期胃がんの場合は、多くのケースで内視鏡治療によって完治を見込めます。
一方、筋層よりも深く広がっている胃がんを進行胃がんと呼びます。
進行胃がんになると内視鏡治療は適応外となり、手術など他の治療の適応となります。
がんが縦方向に深く広がれば広がるほど転移する可能性が高くなります。
転移はがんがほかの臓器に飛び火することをさします。

胃がんが胃粘膜内に留まっている場合は転移はほとんど起こりません。
しかし、胃がんが粘膜下層より深く広がると小さなリンパ管や血管にがん細胞が入り込んでリンパ節や肝臓などに飛び火することがあります。
転移する臓器としては①リンパ節 ②腹膜 ③肝臓 ④そのほかの臓器(これを遠隔転移とよびます)の順番に頻度が高くなります。

①リンパ節転移
リンパ節は全身のいたるところに存在します。
リンパ節には沢山のリンパ球とよばれる免疫細胞が存在し、細菌やウイルスなどの外敵の侵入を食い止める免疫の役目を果たしています。
リンパ節は胃の周囲にも多数存在しています。
がん細胞がリンパ管を通ってリンパ節に侵入して増えている状態をリンパ節転移と呼びます。胃の周りのリンパ節(第1群リンパ節)、胃の裏側と膵臓の周りのリンパ節(第2群リンパ節)までの転移であれば外科手術で切除できます。
しかし、大動脈周囲のリンパ節(第3群リンパ節)、遠くはなれたリンパ節(遠隔リンパ節)に転移しているときは外科手術の適応外となります。

②腹膜転移
胃がんが胃壁を深く広がって胃壁の外側の漿膜を越えていくとがん細胞がお腹の中に散らばった状態になります。
これを腹膜転移(または腹膜播種)とよびます。
がん細胞が大腸や小腸、大網(たいもう)や腹膜にくっついてそこでがん細胞が増殖する転移です。
この状態まで転移が進行すると腹水という水がお腹にたまったりします。
腹膜転移が進行すると、さらに様々な症状がでることがあり、例えば大腸や小腸に広がると腸閉塞などが生じることがあります。

③肝転移
胃から出て行く血流は門脈という太い血管を通って肝臓に流れ込みます。
この血流をつたってがん細胞が肝臓に流れていって肝臓で増殖して大きくなる転移を肝転移とよびます。

④遠隔転移
そのほか遠隔転移する臓器としては、肺、骨、髄膜、脳、皮膚などがあります。
女性では卵巣に転移することもあります。
早期胃がんの状態で見つけることができると、内視鏡治療などの適切な治療によって多くの場合治癒が可能です。
そのため、やはり早期発見、早期治療が重要です。
しかし、早期胃がんの状態ではほとんどの場合自覚症状は無いため、症状が無くても定期的な検査を受ける事が重要となります。
症状が出るのは進行がんになってからが多いので「私は症状がないので大丈夫」というのは、がんの世界では大間違いなのです。
一般的に胃癌の手術というと、お腹を切る外科手術をイメージされますよね。
ところで、お腹を切らない手術「内視鏡手術」があるのをご存知でしょうか?
内視鏡手術は、治療用の内視鏡から電気メスなどの器具を入れて病変部を切除する手術の方法です。
体への負担は外科手術よりも小さくなり、胃の機能も保たれるのが大きな特徴です。
対象となるのは、ステージIの早期がんの一部です。
ただし、ステージIでも内視鏡的切除の対象にならず、外科的手術を受ける人もいます。
内視鏡手術には、EMR(イーエムアール:内視鏡的粘膜切除術)とESD(イーエスディー:内視鏡的粘膜下層剥離術の略)の2つがあります。
EMRやESDの対象になるのは、主に粘膜内に留まっている悪性度の低いがんです。
このようながんはリンパ節に転移していることがほとんどないとされ、EMRやESDの良い適応とされます。

内視鏡手術の具体的な方法について説明します。
EMRは、まず生理食塩水などを病変の下の粘膜下層に注射して病変を浮き上がらせます。
次に内視鏡の先端からスネアという輪っか状のワイヤーを出して浮き上がった病変を締め、高周波電流を流して病変を焼き切る方法です。

ESDは、EMRと同様に病変を浮き上がらせた後、内視鏡先端から専用の電気メスを出して病変部分と粘膜下層を高周波電流で焼きながら切除する方法です。

EMRやESDの主な合併症としては、出血と穿孔があります。
合併症の頻度は5%以下とされます。
穿孔は切除する場所の消化管壁に穴があいてしまうことです。
穿孔が起きてもすぐに閉じれば問題ありませんが、腹膜に炎症が起きると腹膜炎という状態になり、腹痛や発熱などを生じることがあります。
出血に関しては、切除中にみられる出血と切除後しばらくしてからみられる場合があります。
そのほとんどは内視鏡で止血することができますが、稀に輸血をしたり緊急手術が必要になることがあります。
仮に穿孔が起きても、内視鏡で穿孔部位を閉じることができますが、緊急の外科手術を必要とすることが稀にあります。

胃が荒れる原因と対処法【まとめ】


いかがでしたでしょうか。

今回のブログでは胃が荒れる原因と対処、そして見逃してはいけない胃がんについてご紹介しました。
胃が荒れる原因について知らなかった方にとって参考になれば幸いです。

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