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【ピロリ菌はキスでうつる?】旦那(夫婦)で感染する?

検診の胃カメラなどでピロリ菌がいそう、と言われた方へ。ピロリ菌がキスなどで夫婦間で(旦那から自分へ等)、子供にうつる、感染するのかどうかは気になりますよね。このブログでは、ピロリ菌はうつるのかも含めた感染経路および検査や除菌費用も詳しく解説します。
この記事を読めば、ピロリ菌について正しく理解することができるようになります。
それでは、どうぞ!
(この記事は日本消化器病学会・消化器病専門医の中村孝彦医師が執筆しています)

「ピロリって可愛げな名前ですが、本当は全然かわいくありません」

 

 

ピロリ菌は胃酸を中和できるスーパー細菌!


まず、ピロリ菌について解説します。ピロリ菌とは胃粘膜にすみついている細菌です。
ピロリ菌本体の長さは4/1000㎜と非常に小さく、らせん形をしています。
ピロリ菌はべん毛と呼ばれる細長いしっぽくるくるまわしながら活発に動きまわることができます。
胃の中には、食べた物を消化するために、胃液が分泌されています。
胃液には金属でも溶かしてしまうくらいの強い酸が含まれているため、胃の中は強い酸性であり普通の菌は生息できません。
胃にはこの強い胃酸があるため昔は細菌が住むことができないと考えられていましたが、ピロリ菌の発見以降、ピロリ菌が胃炎や胃がんなどの様々な胃の病気に関っていることがわかってきました。
ではなぜ、ピロリ菌は強い胃酸が分泌される胃の中で生きることができるのでしょうか。
ピロリ菌が生きていくのに最適なpHは6~7といわれており、pHが4以下では生きることができません。
それなのに、なぜピロリ菌は胃の中で生きていけるのでしょうか?その答えはピロリ菌が自分で分泌している「ウレアーゼ」という酵素にあります。
ピロリ菌はウレアーゼの力を借りて胃の中の尿素を分解してアンモニアという物質を作りだします。
このアンモニアはアルカリ性のため、ピロリ菌のまわりの胃酸を中和してアルカリ性に傾け、ピロリ菌が生息できるのです。
胃がんに関係しているピロリ菌に感染するのは嫌ですよね。
ピロリ菌にはいつうつってしまうのでしょうか。
ピロリ菌に感染した人はほとんどが子供の頃に感染し、一度感染すると多くの場合、ピロリ菌を薬で除菌しない限り胃の中に棲みつづけます。
ピロリ菌にうつっても、初期では症状のない人がほとんどです。
ピロリ菌の感染者数は日本では6,000万人程度ともいわれています。
10~20代では10%程度ですが、50代以上の人では40%程度、さらに60歳以上では60%程度と一気に感染率が高くなっていることがわかっています。
まさにピロリ菌は私たちにとって非常に身近な病気といえます。

ピロリ菌はキスでうつる?旦那(夫婦)で感染する?



さて本題ですが、ピロリ菌がうつるのかが気になりますよね。
ピロリ菌はどんな経路で、どのタイミングで人の胃に住み着くのでしょうか。
ピロリ菌がどんな感染経路で感染するのかの詳細は明らかになっていませんが、口からピロリ菌が入れば感染することは間違いないようです。
ということは、生水を飲んだり、キスをしたときにピロリ菌がうつるのでしょうか。
安心してください。
上下水道が整備された清潔な今の日本では、生水を飲んでピロリ菌に感染することはないと考えられています。
また、成人してからの日常生活では、キスなども含め夫婦間(旦那から自分へなど)でピロリ菌がうつることは、まずないと考えられています。
ピロリ菌は、ほとんどが人が子供(幼児)のときに感染すると言われています。
それは幼児期の胃の中は酸性が弱く、ピロリ菌が生きのびやすいからと考えられています。
つまり、注意すべきなのは親から子への家庭内感染です。
特にピロリ菌に感染している大人から子供(乳幼児)への食べ物の口移しによって、ピロリ菌がうつる可能性があるので要注意です。

ピロリ菌にうつると胃がんになる?



ピロリ菌に感染(うつる)すると、先ほど説明したピロリ菌がつくりだすウレアーゼと胃の中の尿素が反応して発生するアンモニアなどによって胃の粘膜が傷つきます。
また、ピロリ菌が存在すること自体で免疫反応がおこり、胃の粘膜に慢性的な炎症が生じます。
つまり、ピロリ菌にうつると胃粘膜に炎症が起き、最終的には胃粘膜全体に広がった炎症により慢性胃炎となります。
この慢性胃炎をピロリ感染胃炎と呼びます。
ピロリ感染胃炎が胃炎や胃潰瘍を引き起こし、胃がんの原因となります。
慢性胃炎が長期間続くと、胃液や胃酸などを分泌する胃の粘膜組織が減少します。胃の組織が減少すると胃の粘膜が萎縮してやせてしまい、萎縮性胃炎という状態になります。
萎縮性胃炎になると胃液が十分に分泌されないため、食べ物が消化されにくく、食欲不振や胃もたれといった症状の原因になります。
さらにピロリ菌は胃炎、胃潰瘍、胃がんといった胃の病気だけでなく、胃MALTリンパ腫や血小板減少性紫斑病といった血液の病気にも関わっておりまさにピロリ菌は胃の病気の黒幕といえます。
ピロリ菌は身近な存在であり、誰しもかかりうる病気です。
まず医療機関でピロリ菌感染をチェックしてもらい、感染がわかったらなるべく早く除菌してもらいましょう。

「ピロリ菌ってメチャクチャ悪い菌なので、除菌してしまいましょう」

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ピロリ菌の検査ってどんな検査?



ピロリ菌の治療である除菌療法を始めるまえに、まずは除菌療法の対象となるピロリ菌があるか確かめます。

ピロリ菌の検査には、内視鏡を使う方法と使わない方法があります。
まず内視鏡を使う検査方法を説明します。
内視鏡を使う方法では、胃の中の様子を観察すると同時に、内視鏡により採取した胃の組織を用いて、迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法の3つのいずれかの検査をします。
迅速ウレアーゼ試験はピロリ菌のもつ酵素のはたらきで作り出されるアンモニアの量を調べて、ピロリ菌がいるかどうかを判定する検査です。
鏡検法は採取した組織を染色して顕微鏡で観察することにより、ピロリ菌がいるかどうかを調べます。
培養法は採取した組織を用いて培養し、ピロリ菌が増えるかどうかを調べる検査です。
次に内視鏡を使わない検査方法を解説します。
内視鏡を使わない方法には、抗体測定法、尿素呼気試験、便中抗原測定の3つがあります。抗体測定法は血液中のピロリ菌に対する抗体の有無を調べることにより、ピロリ菌に感染しているかどうかを判定する検査です。
尿素呼気試験では検査用の薬をのんだ後に、吐き出された息を調べて、ピロリ菌に感染しているかどうかを判定します。
便中抗原測定法は便の中にピロリ菌抗原があるどうかを調べる検査です。
ピロリ菌の検査は、上に説明したいずれかの方法で行われますが、複数の検査をうけることで、より確かに判定できるとされています。

 

ピロリ菌の治療 【除菌療法】と費用




検査の結果、ピロリ菌に感染している場合は、薬を服用して行う除菌療法を受けます。
除菌療法の対象となるのは、内視鏡検査で胃炎や胃潰瘍、早期胃癌と診断された患者さんです。
他に血液の病気である胃MALTリンパ腫や特発性血小板減少性紫斑病の患者さんも対象となります。
ピロリ菌の除菌療法は、1種類の胃薬と2種類の抗菌薬の合計3剤を内服します。1日2回、7日間服用します。
正しく薬を服用すれば1回目の除菌療法の成功率は約75%-90%とされます。
除菌治療が完了した後、4週間以上経過してからピロリ菌の検査をもう一度行い、除菌できたかどうかを判定します。
通常は尿素呼気試験という方法を用いて検査を行いますが、もし検査に抗体測定法を用いる場合は治療完了後、6ヵ月以上あけて再検する必要があります。
ピロリ菌の除菌にかかる費用は概算で、検査に約2,000円、治療に約2,000円かかります(保険診療、3割負担)。

一次除菌、二次除菌って何?




1回目のピロリ菌の治療のことを一次除菌と呼びます。
一次除菌で除菌できなかった場合は、二次除菌を行います。
二次除菌でも同様に再び7日間かけて薬を飲みますが、二次除菌では2種類の抗菌薬のうち1つを初回とは別の薬に変更して、再び除菌療法を行います。
運悪く一次除菌療法で除菌ができなくても、二次除菌療法をきちんと行えばほとんどの場合で除菌が成功すると言われています。
確実にピロリ菌を除菌するためのポイントは指示された薬を必ず用法通りに服用することです。患者さん自身の判断で内服を中止したり薬を飲み忘れたりすると、除菌がうまくいかなかったり、治療薬に耐性をもったピロリ菌が出現する可能性があります。
除菌療法中に気になる症状があったときは、当院に相談してください。
除菌療法中は、アルコールの摂取を避けるのも除菌を成功させるポイントです。ごくまれに一次除菌でも二次除菌でも除菌がうまくいかない方がいます。
その場合は三次除菌になるのですが、残念ながら保険診療がきくのは二次除菌までとなります。
ちなみに三次除菌は自費診療となり、診療費こみで概算で約15,000円程度となるようです。
ピロリ菌を除菌することで将来の胃がんのリスクを50%も減らす事はできます。
しかし、除菌後もまったく胃がんが発症しないという訳ではないため、年に1回程度の定期的な内視鏡検査の受診が大切です。

まとめ


いかがでしたでしょうか。今回のコラムでは「【ピロリ菌はキスでうつる?】感染が心配な方必見!」について解説しました。
ピロリ菌を知らなかった方にとって参考になれば幸いです。このコラムが患者様の明日からの健康にお役立て頂けることを願っています。
ピロリ菌が気になる方は、お気軽にご相談ください。

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「自分がピロリ菌いるかどうか調べていない方は、調べてみましょう」