【胃カメラとバリウム検査はどっちが辛い?】
あなたは、胃カメラを受けたことがありますか?
それとも会社の検診でバリウム検査を進められたけど、胃カメラとどっちにしようか迷っておられますか?
胃カメラとバリウム検査はどっちが辛いのか?どっちが楽なのか?気になりますよね。
どっちが辛いのかはバリウム検査という方もいれば、胃カメラという方もいるでしょう。
バリウム検査と胃カメラについて、徹底比較し、わかりやすく解説したいと思います。
それでは、どうぞ!
(本稿は日本消化器病学会専門医の中村孝彦医師が執筆しています)
「バリウムを飲むのが辛いという患者さんは結構おられますね」
バリウム検査は影絵、胃カメラはテレビ
バリウム検査についてご存知でしょうか。
バリウム検査はこれまで胃がん検診の一次検査として主に行われ、異常があった場合に二次検査として胃カメラが行われてきました。
バリウム検査の方法について説明します。
バリウム検査は胃の中に飲んだバリウムを薄く広げて、胃の表面の凹凸や胃の形を静止画のレントゲンで撮影して写真をとる影絵のような検査です。
一方、内視鏡検査は先端についた超小型のカメラで胃の中を直接、動画であるビデオ画像で観察するものです。
別の言い方をするとバリウム検査は白黒の影絵を見ているようなもので大まかな表面の凹凸は分かりますが、凹凸のない平坦な病変はわかりません。何より影絵ですから色の違いは認識できません。
それに対して内視鏡では胃の粘膜や腫瘍の色の変化や、わずかな粘膜の隆起や凹み、表面の胃模様のちがいを認識できます。
さらには、リアルタイムで空気の量を変えて観察したり、水をかけたり、組織をとることもできます。
上述の通り、バリウム検査は影絵なのに対して胃カメラはテレビと考えると、その検査の精度の違いがよりイメージしやすいかと思います。
特に早期の胃がんでは、病変部がかすかに赤みがあったり、ごくわずかな隆起としてしか分からないことが多いため、バリウム検査では認識できずに内視鏡で初めて認識できるということを多く経験します。
さらに、内視鏡では咽頭や食道についても同様に早期がんも含めて詳細に観察できますが、バリウム検査では咽頭は観察できませんし、食道はすぐにバリウムが流れてしまうため詳細な観察や小さな早期がんの指摘は難しくなります。
胃カメラは観察と同時に組織検査ができる
バリウム検査に対して内視鏡が優れている大きな部分は、内視鏡では癌などが疑われる病変があれば内視鏡の先端から鉗子といわれる装置を出して病変の一部を取ることができる点です。
取った組織を病理診断に出して病変が癌なのか癌でないのかの確定診断ができます。
胃カメラは高い診断能を有していますが、これまで胃がん検診においてバリウム検査が胃カメラよりも多く行われてきたのはなぜでしょうか。
それはあくまで集団検診という観点ではバリウム検査の方が低コストで、検査を行う人手も多いためにより多くの受診者を検査することができたからです。
患者さん個人の観点から見れば、精度の高い内視鏡検査が断然、おススメといえるでしょう。
バリウム検査は被爆もあるし、精度が悪い
バリウム検査では少量ですが放射線被ばくがあるのも欠点の一つです。日本対がん協会が2010年に行った胃がん検診のデータでは、胃がん検診の受診者は合計で約243万人でした。
検診を受けた人のうち精密検査が必要だと判断されたのは約20万人(8.5%)でした。
さらにこの中で精密検査である胃カメラを受けた方は約15万(77.5%)でした。実際に癌が発見された方は約2,500人(0.1%)と報告されています。
この結果を皆さんはどう感じるでしょうか。
この結果は視点を変えると約15万人の受診者の方が、バリウム検査と胃カメラの2つの検査を受けるという二度手間をかけていることになります。
その結果、実際に癌が見つかったのはバリウム検査と胃カメラの2つの検査を受けた方の約2%というように考えるとバリウム検査は効率の悪い方法とも考えられます。
二度手間になるのなら、はじめから胃カメラを受けたいと多くの方が思われるのではないでしょうか。
麻酔を使った細径胃カメラは楽!
内視鏡にも欠点があります。
一般的にバリウム検査よりも麻酔をしない胃カメラの方が辛いと感じています。
しかし、胃カメラの検査の時に麻酔の一つである鎮静剤を注射することで、眠っている間に胃カメラを楽に受けることができます。
また口から内視鏡を入れる胃カメラよりも苦痛の少ない、鼻から鉛筆よりも細い胃カメラを入れて観察する経鼻内視鏡が普及してきています。
当院でも、鎮静剤を使った胃カメラ、経鼻内視鏡いずれも対応しておりますので、気軽にご相談下さい。
バリウム検査は意外と辛い
まず、バリウム検査の手順について説明します。
バリウム検査は、バリウム(胃部造影剤)を飲んだ後、検査台の上で体の向きを上下左右に回転させます。
そして食道から胃と十二指腸までを流れるバリウムをX線で撮影し、胃の形や粘膜上に異常がないかを確認する画像検査になります。
バリウムは「飲むのが辛い」という声が多く聞かれます。理由はいくつかありますが、一つにはバリウムの味がまずいということが挙げられます。
粘度の高い白い液は、のどごしが良いものではなく、正直に言うと「まずい」検査液です。
しかも、これを検査者から「一気にごくごく飲んでくださいね!」と指示されるのが、さらにつらい理由です。
また、検査精度をよくするためにはバリウムを胃の中に貯めておかなくてはなりません。
つまり、ゲップを我慢しなければならないのですが、これがさらに患者さんを辛くさせる理由です。
おまけに、胃バリウム検査では事前に胃を膨らませておく必要があり、バリウムの前に「発泡剤」という胃を膨らませる薬も飲まなくてはいけません。
発泡剤はガスを含んでいるため、飲んだ後は炭酸飲料と同じようにゲップが出やすくなります。検査終了までゲップを我慢するのが辛いと感じる受診者も多いでしょう。
そして検査終了後は、バリウムを出来るだけ早く体の外へ排出するために下剤を飲む必要があります。
下剤の効果は4時間程度で出てきますが、完全にバリウムを出しきるのは翌日になってしまいます。
この時に、バリウムがうまく体の外へ出ないと便秘になる可能性があります。
バリウム検査は、意外と大変な検査、しんどい検査であることが分かります。
検査前から検査後まで非常に大変な思いをしなければいけない検査と言わざるを得ません。
楽に胃カメラ検査を受けられるクリニックを選ぶのがよいと思われます。
まとめ:バリウム検査と胃カメラの費用は?
いかがでしたでしょうか。 今回のブログではバリウム検査と胃カメラの違いについてご紹介しました。
意外と楽ではないバリウム検査、そして鎮静剤を使えば楽な胃カメラについてご理解いただければ幸いです。
正直、検査精度のことを考えると、消化器専門である医師の私は圧倒的に胃カメラをおススメしたいです。
ちなみに胃バリウム検査の検査費用は、5千~7千円程度は、胃カメラ検査の検査費用は6千~1万円程度となります。
お気軽にご相談ください。
「バリウム検査より胃カメラで1度に済ましてしまう方が楽かもしれません」