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残便感・おならの原因は痔?大腸癌?

「トイレにはよく行きたくなるけど、なんどトイレに行っても残便感があってすっきりしない」
「臭いおならがよく出る」
などの症状でお困りの方へ。
痔や大腸癌との関係、女性の更年期障害との関係を気にされている方は多いかと思います。
今回は、これらについて、どこよりも分かりやすく専門医が解説していきます。
それでは早速どうぞ!
(本稿は日本消化器病学会・消化器病専門医の中村孝彦医師・中村玲佳医師が執筆しています。)

「気になる残便感について徹底的に解説します」

 

残便感の原因は?


残便感は、腸内の便が完全に排出されず、残っている感覚を指します。
一般的に、残便感の原因は以下のようなものがあります。
1.便秘
便が腸内に滞留し、排便が不十分になることで残便感を感じます。
2.痔
痔は直腸内の静脈が膨張して腫れることで生じる病気です。
痔によって排便時に痛みや不快感が出て、これを残便感と感じることがあります。
3.大腸癌
大腸がん、大腸ポリープなどの腸内疾患が原因で残便感を引き起こすことがあります。
特に直腸やS状結腸といった肛門の出口に近い腸に腫瘍性病変ができることで残便感を感じるときがあります。
4.消化管の機能障害
胃や小腸、大腸の動きが鈍くなり、便の量が減って腸内に便が滞留している時間が増えて、残便感が生じることがあります。
5.精神的ストレス
脳腸相関といって腸は脳の影響やストレスを敏感に感じとる臓器です。
ストレスや不安感が腸の運動を妨げ、便秘や残便感を引き起こすことがあります。
6.女性の更年期障害
女性の更年期障害は卵巣機能の低下によって生じる身体的および精神的な症状の総称です。
卵巣機能の低下による女性ホルモンのバランスの変化によって残便感を生じることがあります。

残便感とおなら、大腸癌は関係ある?



残便感は、便が直腸内に残留している感覚であり、排便の欲求があるが排便ができない状態を指します。
一方、おならは直腸内や大腸内で発生するガスを肛門から排出することを指します。
残便感とおならは、一定の関係があります。
便が直腸内に残留していると、便の質や量に応じて大腸内で発生するガスの量も増加します。
そのため、残便感を感じる場合には、おならが出やすくなる傾向があります。
また、おならを排出することで、直腸内の圧力が下がり、排便を促進することができることもあります。
ちなみにおならと大腸癌は関係あるのでしょうか。
大腸内で腐敗・発酵する食物から発生するガスは、一部が肛門からおならとして排出されます。
大腸癌が進行すると、腫瘍が大腸内の通り道を塞ぎ、腸内の細菌が異常増殖することがあります。
そのため、大腸癌による腸内環境の変化によって、おならの匂いや排出量が変化することがありますので要注意です。

残便感の原因が痔の場合の治療は?



痔は肛門周囲の静脈が膨張して炎症を起こすことでできる肛門部の隆起のことをさします。
痔ができると肛門の出口が狭くなるので、直腸内の圧力が高まり、その結果、排便時に痛みや不快感を引き起こすことがあります。
また、痔が腫れることで、直腸内の空間が狭くなり、便が通りにくくなることもあります。
このような状況が続くと、便が腸内に滞留し、残便感を引き起こします。
痔が原因で残便感を感じる場合は、まず痔の治療が必要です。
軽度の痔であれば、塗り薬や浴槽に浸かることで症状を緩和することができます。
軽い痔であればボラザG軟膏を、腫れている痔であればステロイド入りの注入軟膏であるヘモポリゾン軟膏を用います。
しかし、肛門の外に脱出してくる重度の痔の場合は、外に脱出してきた重度の痔の場合は手術が必要なこともあります。
日帰りでできるゴム輪結紮術などの治療もありますが、最重症のものに関しては入院で手術を行わないといけない場合もあります。
軟膏治療や手術によって痔の腫れを取り除くことで、残便感を改善することができます。

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残便感の原因が便秘の場合の治療は?



便秘が続くと、腸内の便が硬くなり、排便が困難になります。
そのため、排便時に便が完全に排出されないことがあります。
便が腸内に残ることで、腸内に圧迫感や不快感を感じ、残便感を引き起こすことがあります。
また、便秘が続くと、腸内の菌が増え、腸内環境が悪化することがあります。
これによって、腸内で便が滞留する時間が長くなり、便が硬くなります。
便が硬くなると、腸内を通過するのが困難になり、排便が不完全になり、残便感を引き起こすことがあります。
便秘が残便感の原因になっている場合は、まず便秘の改善が必要です。
食物繊維を多く含む食事や運動、水分補給などにより、腸内の便を柔らかくし、排便を促すことが大切です。
また、ストレスを感じる場合は、リラックスする方法を見つけることが大切です。
便秘を改善するためには、以下のような方法が有効です。

☑食物繊維を多く含む食品を摂る
☑水分を十分に摂る
☑運動をする
☑規則正しい生活リズムを作る

これらの生活習慣の改善によって便秘がよくならなかった場合は、便秘薬の出番です。
便秘薬を使う場合は、まず、緩下剤といって便に水分を含ませて便がスルッと出やすくする薬を使います。
具体的には、酸化マグネシウム(マグミット)、アミティーザ、リンゼスといった薬です。
他に、モビコールといって、体の中に吸収されにくい水薬を使って、文字通り便を水で押し流すような薬も近年販売されており、体にやさしい便秘薬の選択肢がどんどん増えています。
これらの緩下剤でダメな場合は、次に腸の動きをよくする薬を使います。
最もマイルドで身体にやさしいのは、腸の血流をよくして腸の動きや腸管ガスの排出を促す大建中湯というお薬です。
これは腸閉塞の患者さんにも非常によく効くお薬です。
グーフィスという比較的最近販売された薬も良いお薬です。
グーフィスは便をやわらかくする緩下剤の働きと、腸の動きをよくする刺激性下剤の働きの両方を持つお薬です。
今まで述べてきた下剤は全て、長期間使用しても耐性がないお薬で、副作用も比較的少ないお薬です。
しかし、これらのお薬だけではどうしても便が出ない方がおられ、そういう方に対しては、センノシド・ピコスルファートなどの刺激性下剤やグリセリン浣腸などの浣腸製剤を使います。
上記の刺激性下剤は長期使用で耐性があり、腸の筋肉がへたって効きにくくなってくるので、どうしても便が出ない時だけに「頓用」というスポットでの使用が推奨されます。

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残便感の原因が大腸癌の場合の治療は?

残便感は大腸癌の症状の一つであることがあります。
大腸癌は、大腸の内側の細胞が異常な成長をして腫瘍を形成する疾患です。
腫瘍が大きくなると、便の通り道を塞ぐことがあり、便が排出されずに残便感を引き起こすことがあります。
大腸癌が原因で残便感が生じる場合、他にも以下のような症状が現れることがあります。

☑血便
☑下痢または便秘
☑腹痛
☑体重減少
☑腸の動きの異常

大腸癌の検査で最もスタンダードな検査が大腸内視鏡検査(大腸カメラ)です。
大腸内視鏡検査は、実際に腸の中を医師の肉眼で見ることで非常に正確な診断ができると同時に、治療もすることができるという非常に優れた検査です。
大腸内視鏡検査により、腫瘍の有無や大きさ、位置などを確認することができます。
大腸癌の治療には、先に述べた大腸内視鏡検査の検査中にできる内視鏡手術の他に、入院して行う外科手術、化学療法、放射線療法などがあります。
治療法は、病気の進行度合いや患者の年齢や身体状況によって異なります。
大腸癌は早期に発見し、治療を受けることで9割以上が治癒する病気なので、早めに検査を受けることが大切です。

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残便感の原因が消化管の機能障害の場合の治療は?

消化管の機能障害は、残便感の原因となることがあります。消化管の機能障害には、以下のようなものがあります。

運動機能障害

消化管は、口から肛門までの一連の筋肉の収縮によって、食物や消化物を運びます。この筋肉の収縮に問題があると、便がうまく排出されずに残便感を引き起こすことがあります。

消化液分泌機能障害

胃や腸などの消化管では、消化液を分泌して食物を分解します。この消化液の分泌に問題があると、食物が十分に分解されずに便が硬くなり、排出されにくくなります。

粘膜障害

消化管の内壁にある粘膜には、腸内環境を調節するための菌が生息しています。
この粘膜に問題があると、腸内環境が悪化して便が硬くなり、排出されにくくなることがあります。
これらの消化管の機能障害によって、便がうまく排出されずに残便感を引き起こすことがあります。
消化管の機能障害を改善する方法には、まず、食物繊維を多く含む食品の摂取、水分の摂取量を増やす、適度な運動を行うの生活習慣の改善が挙げられます。これらの生活習慣の改善で効果がなければお薬を使った治療を行います。
胃の機能障害(機能性ディスペプシアともいいます)に用いる代表薬としては、六君子湯、アコファイドがあります。
小腸の機能障害には、モサプリド(ガスモチン)というお薬を使います。
一方、大腸の機能障害(過敏性腸症候群ともいいます)には、大建中湯や、コロネル、イリボーといった薬を用います。

残便感の原因が精神的ストレスの場合の治療は?




精神的ストレスは、便秘や下痢などの消化器症状を引き起こすことがあり、残便感の原因にもなることがあります。
ストレスは、身体的な反応として交感神経が活性化し、消化器官の運動を抑制することが知られています。
このため、ストレスが続くと消化管の運動が低下し、便秘を引き起こすことがあります。
また、ストレスが原因で下痢が発生する場合、下痢後にも残便感を感じることがあります。
さらに、ストレスは脳と消化器官の間に相互作用をもたらすことがあります。
脳がストレスを感じると、消化管に影響を与える神経伝達物質のバランスが変化し、消化管の運動を調節する神経系に影響を与えることがあります。
その結果、便秘や下痢、残便感などの消化器症状が発生することがあります。
このように、ストレスと消化器症状、残便感には密接な関係があることが分かっています。
ストレスを感じる場合には、リラックス法や運動、睡眠の改善などのストレス解消法を取り入れることが、残便感の改善につながる場合があります。

残便感の原因が女性の更年期障害の場合の治療は?




女性の更年期障害に伴う残便感には、まず食物繊維を多く含む食品や水分を適量摂ること、運動習慣を身につけることで腸の運動を改善するようにし、補助的に便秘薬を用いてます。
これらでも改善がなければ、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」「加味逍遥散(かみしょうようさん)」「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」などの更年期障害を改善する漢方薬を用います。
更年期障害に伴う低下した卵巣機能を補うために、女性ホルモンの補充療法が行われることもあります。
ホルモン補充療法によって、便秘が改善することもあります。
また更年期障害に合併したストレスや不安、うつ病などの精神疾患が原因である場合には、心理療法や抗不安薬、抗うつ薬などの治療が行われることがあります。


いかがでしたでしょうか。

このように残便感を引き起こす原因には様々なものがあり、原因によって治療法が異なります。
残便感がある場合、当院では、まず肛門鏡検査で痔疾患の有無と肛門機能を調べます。
痔疾患がなく肛門機能に問題がない場合は、大腸、特に肛門部に近い腸であるS状結腸や直腸に大腸癌や大腸ポリープなどの腫瘍性病変がないかどうかを調べるために大腸内視鏡検査を行います。
肛門鏡検査や大腸内視鏡検査で問題がない場合は、腸の動きなどの機能に問題があると考え、腸の機能を改善する薬を使用したり場合によっては更年期障害の治療をします。
残便感でお困りの方は、大阪の堺なかむら総合クリニックにお気軽にご相談ください。

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