【膵臓癌の初期症状は背中の痛み?】ブログで医師解説!

膵臓癌(膵がん)というと、どんなイメージをお持ちでしょうか。

 

膵臓癌は別名「癌の王様」と言われますが、その悪性度の高さで有名です。

 

膵臓癌になったら助からないイメージをお持ちの方もいるかもしれません。

 

このブログでは、そんな怖い膵臓癌の背中の痛みなどの初期症状について、どこよりも分かりやすく医師が解説してきます。

 

それでは、早速どうぞ!

(本稿は消化器病専門医の中村孝彦医師が執筆しています)

「膵臓癌は日本でも、どんどん増えている癌なのです!」

【ブログ目次】


1.膵臓癌の初期症状は背中の痛み?症状チェック

2.膵臓癌の痛みの場所はどこ?位置を教えて!

3.膵臓癌の生存率、余命の平均は?

4.膵臓癌の進行スピードと検査は?

5.膵臓癌の治療をステージ毎にブログ解説

6.膵臓癌の原因と予防は?

 

1.膵臓癌の初期症状は背中の痛み?症状チェック


膵臓癌かどうか気になる方は、症状をチェックしてみましょう。

 

初期症状としては、背中の痛みなどの疼痛、黄疸(おうだん)、下痢、体重減少があります。

 

黄疸(おうだん)というのは聞きなれない言葉ですよね。

 

子供がいる方ならイメージがつきやすいかもしれないかもしれませんが、うまれたばかりの新生児が体が黄色いのがまさに「黄疸(おうだん)」です。

 

肝臓が悪い方も末期症状として黄疸が出ることがあります。

 

黄疸で黄色くなるのは、胆汁(たんじゅう)という黄色い消化液の通り道を膵癌がふさいでしまうことによって、黄色い胆汁が血液中に逆流し、体が黄色くなると理解していただければ分かりやすいと思います。

 

下痢や体重減少がおこるのは、膵臓癌が膵臓から出ている膵液(すいえき)という消化液の通り道を塞いでしまうことが原因となります。

 

膵液はタンパク質や脂質を消化する働きがあるのですが、その消化液の分泌が障害されることによって、消化不良をおこして下痢や体重減少をおこすのです。

 

また、膵臓はインスリンという血糖値を下げるホルモンを作っている臓器でもあるのですが、膵臓癌ができることでインスリンの出がわるくなり糖尿病になることもあります。

 

これまで健康だった人が急に糖尿病になり、調べてみると膵癌が見つかった、というケースも珍しくありません。

  

2.膵臓癌の背中の痛みの理由は?


 

さて、膵臓癌の初期症状に「疼痛」があるとお話しましたが、膵臓癌で起こりうる痛みの場所は、①みぞおちの痛み、②背中の痛み、③腰部の痛み、の3つがあります。

 

①のみぞおちの痛みは、まさに膵臓がある場所の痛みです。

 

これは、膵臓癌が膵臓の消化液であり膵液の流れをふさぐことで、膵液がお腹の中に漏れ出して膵炎をおこすためと考えられます。

 

一方で、②の背中の痛み、③の腰の痛みの理由はなぜでしょうか。

 

膵臓癌の背中の痛みなどの理由は、膵癌が背中側にある神経叢(しんけいそう)に浸潤(しんじゅん)することで起きます。

 

神経を直接障害するために、膵臓癌の背中の痛みは時に強烈な痛みとなり、モルヒネなどのオピオイドなどの強い痛み止めが必要になることが多いです。

 

3.膵臓癌の生存率、余命の平均は?


膵臓は身体の奥にある臓器です。

 

具体的には、胃の裏側、背骨の前にあります。

 

膵臓の周りには、大動脈や神経、十二指腸、胆管など身体にとってまさに「核」となる臓器が密集しています。

 

そのため、膵臓癌が広がると、すぐ周りの重要な臓器に浸潤してしまい、切除できなくなってしまいます。

 

これが膵臓癌が「癌の王様」といわれる所以で、なんと膵癌の診断時に約70%がすでに切除不能の状態となっているのです。

 

診断時から5年生きられる「5年生存率」はなんと、6-7%程度で、これは全ての癌腫で最悪の値です。

 

例えば、大腸癌の5年生存率が73%程度であることを考えると、いかに膵臓癌の悪性度が高いか、お分かりかと思います。

 

しかし、早期診断ができ、手術ができると5年生存率は15%と2倍以上になり、平均余命を伸ばすことができます。

  

4.膵臓癌の進行スピードと検査は?


膵臓癌の年間死亡者数は3万5千人以上であり、これは膵臓癌の罹患数とほぼ同等です。

 

また、日本では膵臓癌の罹患数、死亡者数とともに年々増加しており、30年前と比べると2倍以上となっています。

 

先にお話しした通り、膵臓癌の周りには重要な臓器が多いために、進行スピードが速く、あっという間にステージが上がってしまいます。

 

そのために、早期発見が重要になるのですが、そのために必要なスクリーニング検査は血液検査と腹部超音波検査(腹部エコー)です。

 

血液検査で腫瘍マーカーであるCA19-9やCEA、また膵臓の酵素であるアミラーゼやリパーゼを測定します。

 

さらに腹部エコー検査で膵臓に腫瘍がないかをチェックします。

 

超音波内視鏡検査やCT、MRI、PETといった検査を組み合わせて診断する場合もあります。

5.膵臓癌の治療をステージ毎にブログ解説!


治療は、太い血管などに浸潤しておらず、癌が膵臓にとどまっているステージ1,2の状態では手術が選択されることが多いです。

 

膵臓癌の手術は、膵頭十二指腸切除術といって、膵臓だけでなく十二指腸・胃、胆管、胆嚢、場合によっては肝臓の一部まで切り取る大手術になります。

 

手術時間は8時間以上におよぶことが多いです。

 

周囲の大血管や臓器に浸潤したりリンパ節転移を起こしたりするステージ3、遠隔転移をおこすステージ4の状態では、抗がん剤を併用することが多く、癌の治療と並行して緩和ケアを行うこともあります。

 

緩和ケアとしては、最後まで食事をとれるように消化管ステントというものを留置したり、強い痛みを抑えるためにモルヒネなどのオピオイドといわれる薬を使ったりします。

6.膵臓癌の原因と予防は?


膵臓癌のリスク因子として、お酒・たばこ、癌の家族歴、糖尿病や肥満が分かっています。

 

特に糖尿病は膵臓癌の患者さんの半数以上の方に存在することがわかっているので要注意です。

 

これらのリスクのある方は、定期チェックが必要ですね。

 

【 まとめ 】


いかがでしたでしょうか。

今回のブログでは膵臓癌について解説しました。

 

膵臓癌は極めて悪性の癌で、早期発見することが非常に重要です。

 

腹痛や、腰、背中の痛み、下痢や体重減少などの症状があったら、ためらわずにクリニックを受診することが大切です。

 

中村診療所・内視鏡内科では、超音波検査をつかった膵癌の早期発見に積極的に取り組んでいます。

 

「もしかして膵癌では?」と気になっている方はお気軽にご相談ください。

↓↓

 中村診療所・内視鏡内科の腹部エコー

 

膵臓癌のことを詳しくなかった方にとってこのブログが参考になれば幸いです。

「糖尿病や腹痛・腰背部痛・下痢があればお気軽にご相談を」

この記事を書いた人

Dr.Taka|中村 孝彦 医師
Dr.Taka|中村 孝彦 医師中村診療所・内視鏡内科 副院長
消化器病専門医|消化器内視鏡専門医|認定内科医

大阪大学医学部卒。住友病院、JCHO大阪病院を経て、大阪国際がんセンターで消化器癌の内視鏡手術を担当。現在、下剤を飲まない大腸検査・無痛内視鏡を行う中村診療所副院長。「抗血栓薬の特徴と内視鏡時の対応:エキスパートに学ぶ安全で楽な外来内視鏡」など著書・論文多数。

『女性医師が常勤の当院は女性の方でも安心です。以下の地球マークのHPリンクから、お気軽にHPをご覧下さい!』