【下痢が続く・1週間止まらない】コロナ?過敏性腸症候群?
下痢だけ続いたり、下痢が止まらなくて、コロナウイルスではないかとお困りでしょうか。
下痢の原因としてストレス性胃腸炎(過敏性腸症候群)は多いのですが、実は新型コロナウイルスの症状に下痢症状があるのをご存じでしょうか。
新型コロナウイルス(Covid 19)感染症が大流行しているしている今日では、下痢と新型コロナウイルスとの関係も気になりますよね。
この時期、下痢が続く状態が1週間以上あったら、コロナの可能性を考えなければなりません。
一方、大事な会議やプレゼンの前に急にお腹が痛くなって下痢になる。下痢だけ続く原因は、過敏性腸症候群の可能性もあります。このブログでは下痢と新型コロナウイルスの関係、過敏性腸症候群について、わかりやすく説明したいと思います。それでは、早速どうぞ!
(このブログは日本消化器病学会・消化器病専門医の中村孝彦医師が執筆しています)
「私も大事な仕事の前におなかをこわすことがあります」
- 下痢が続くのはコロナか過敏性腸症候群かチェック
- 下痢が続く、1週間止まらない!過敏性腸症候群とは?
- 過敏性腸症候群の原因は?
- 過敏性腸症候群の診断基準をチェック!
- 「下痢型」「便秘型」過敏性腸症候群のタイプ
- 過敏性腸症候群が治った人はどんな治療をしている?
- まとめ
下痢が続くのはコロナか過敏性腸症候群かチェック
新型コロナウイルスが流行してから長いですが、やはり心配ですよね。
国内のデータでは新型コロナウイルス(Covid 19)感染症では発熱や咳は6割程度の患者さんで出現し、倦怠感が5割程度の患者さんでみられているようです。
さらに、味覚嗅覚異常も2割程度の方でみられるようです。
しかし、1-2割の患者さんでは新型コロナウイルス感染症の最初の症状が下痢であるということをご存知でしょうか。
下痢の原因は、感染性腸炎・過敏性腸症候群など様々ですが、やはり新型コロナウイルスとの関係は気になりますよね。
例えば、「昨日下痢が2回出たけど今日は普通便で元気だ」という下痢症状だけの方の場合はあまり新型コロナウイルスを疑いません。
しかし、明らかな原因のない下痢が4日以上続いていて、かつ①②③のいずれかがある時は新型コロナウイルス感染症を念頭に入れなければなりません。
①風邪症状や発熱、息苦しさ、倦怠感のいずれかが続いている
②新型コロナウイルスに感染した人と、2週間以内に濃厚接触歴がある
③味覚・嗅覚異常がある
上記にあてはまる方は重症化する前に速やかに医療機関を受診しましょう。
下痢が続く、1週間止まらない!過敏性腸症候群とは?
新型コロナウイルス感染症を含む感染性腸炎以外の下痢の原因として頻度が多いのが過敏性腸症候群(ストレス性胃腸炎)です。
発熱や呼吸器症状などがなく、下痢だけ続く場合は過敏性腸症候群かもしれません。
過敏性腸症候群とは、お腹の痛みや調子が悪く、便秘や下痢などのお通じの異常(排便回数や便の形の異常)が数ヵ月以上続く状態のときに最も考えられる病気です。
おなら(屁)が止まらない、お腹が痛くないのに下痢だけ1週間以上続く、水下痢が止まらないなど、様々な症状が出てくることもあります。
過敏性腸症候群は、大腸に腫瘍や炎症などの病気がないのに、上記のような症状が続いていることが前提になります。
そのため、過敏性腸症候群の診断のためには必ず大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けて、大腸がんや大腸ポリープ、また潰瘍性大腸炎などの大腸炎がないことを確認することが必要です。
過敏性腸症候群は日本人の約10%の人が患っているという、日常でもよくみる病気です。
過敏性腸症候群は若い女性に比較的多く、年齢とともに減ってくることがわかっています。
過敏性腸症候群は命に関わる病気ではありませんが、お腹の痛み、便秘・下痢などの症状のために日常生活に支障をきたすことが少なくありません。
また、人前に出た時や、大事な会議やプレゼンの時にお腹の痛みや下痢が出るのではないか、という不安から日常生活の質を著しく落とす病気です。
腸は食べ物を消化・吸収するだけでなく、不要なものを便として体の外に出す働きを持っています。
不要なものを体外に排出するためには、食べ物を口から肛門方向に移動させるための腸の収縮運動と腸の変化を感じとる知覚機能が必要です。
腸の運動や知覚は、脳と腸の間の神経の情報交換によりコントロールされています。
しかし、ストレスによって不安状態になると、脳と腸の間の神経の情報交換がうまくいかなくなります。
神経の情報交換のアンバランスにより腸の収縮運動が激しくなったり、痛みを感じやすい知覚過敏状態になります。この状態が強いことが過敏性腸症候群の特徴です。
実際に、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)などの刺激でも、健康な人は強く刺激しないと腹痛を感じないのに対し、過敏性腸症候群の患者さんでは弱い刺激で腹痛が起こってしまいます。
過敏性腸症候群の原因は?
過敏性腸症候群(ストレス性胃腸炎)になる原因はわかっていません。
しかし、例えば細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかったとき、腸炎から回復した後に過敏性腸症候群になりやすいことが知られています。
感染によって腸に炎症が起き、腸の粘膜が弱くなるだけではなく、私たちの腸にいる腸内細菌の変化も加わり、運動と知覚機能が敏感になるためです。
最近では過敏性腸症候群でみられる腸や脳の機能異常を起こす物質を見つける研究が行われています。
過敏性腸症候群の患者さんでは、脳から腸に向かう信号と腸から脳に向かう信号の両方が強くなっていると考えられています。
ストレスによって脳から腸に向かう神経の信号が強くなり、自律神経や内分泌システムを介して消化管運動が変化して痛みや下痢・便秘などを引き起こすのです。
過敏性腸症候群の診断基準をチェック!
過敏性腸症候群(ストレス性胃腸炎)の診断基準をチェックしてみましょう。
最近3ヶ月間、月に4日以上腹痛が繰り返し起こり、①排便と症状が関連する、②排便頻度の変化を伴う、③便性状の変化を伴う、のうち2つ以上を満たす。
①の「排便と症状が関連する」とは、お腹が痛くなった時にトイレでお通じを出すとお腹の痛みがマシになるということです。
さらに、確定診断のためには、大腸がんなどの悪性疾患や炎症性腸疾患などがないかを大腸内視鏡検査で調べる必要があります。
他にも40歳以上の患者さんや、家族に大腸炎や大腸癌の方がいるなどの危険因子がある患者さんに対しては、積極的に大腸内視鏡検査を行う必要があります。
当院では、下痢を飲まない大腸内視鏡検査も行っているので、下剤を飲まずに楽に負担のない検査も行えます。
また、症状に応じて腹部超音波検査などを追加する他、消化器症状や心理状態、生活の質(QOL)を評価する質問票を記入してもらい、病態の総合的評価を行います。
「下痢型」「便秘型」過敏性腸症候群のタイプ
過敏性腸症候群(ストレス性胃腸炎)の患者さんでは便秘がちになる方から下痢を起こしやすくなる方までさまざまなタイプがあります。
過敏性腸症候群の方の病態は「便秘型」、「下痢型」、「混合型」、「分類不能型」の4つの型に分けられます。
4つの型の違いにより症状も異なります。例えば、便秘型の患者さんはストレスを感じると便秘がひどくなります。
一方、下痢型の患者さんは緊張するとお腹が痛くなったり、下痢が生じます。
混合型の患者さんは下痢をしたり便秘をしたり、便通が変動するのが特徴です。
過敏性腸症候群が治った人はどんな治療をしている?
過敏性腸症候群(ストレス性胃腸炎)が治ったというブログを目にするかもしれませんが、過敏性腸症候群は治せる病気です。
過敏性腸症候群の治療の基本は、まずは生活習慣の改善です。
3食を規則的にとり、暴飲暴食、夜間の大食を避け、食事バランスに注意することが重要です。
刺激物、高脂肪の食べもの、アルコールは腸にとって負担になるのでなるべく控えてください。
さらにストレスを溜めずに、睡眠と休息を十分にとりましょう。
まずは生活習慣を改善することが基本ですが、それでも症状がよくならない場合は次にお薬による治療を行います。
薬物療法で最初に用いるお薬としては、消化管機能調節薬と呼ばれる腸の運動を整える薬や、プロバイオティクスがあります。
消化管機能調節薬の代表薬としては、ガスモチン、プリンペラン、ナウゼリン、セレキノンなどがあります。
プロバイオティクスというのは聞きなれない言葉ですが、乳酸菌やビフィズス菌など人間の体にとって有用な菌の製剤のことです。
他には高分子重合体といわれる水分を吸収し便の水分バランスを調整する薬があります。代表的な商品名としてはコロネルなどがあります。
今挙げた消化管機能調節薬、プロバイオティクス、高分子重合体の3つのお薬は下痢症状が中心の方、便秘症状が中心の方のどちらにも用いられます。
下痢型の方には腸の運動異常を改善させるイリボーというお薬が効果があることが多いです。
一方、便秘型の方には便を柔らかくするリンゼスやアミティーザも用いられます。
また下痢に対しては止痢薬、お腹の痛みにはブスコパンなどの抗コリン薬、便秘に対しては下剤も補助的に使うことがあります。
漢方薬を補助的に使用することも勧められています。
漢方薬は日本でも古くから使われている生薬を組み合わせたもので、西洋薬とは違った効き方をするお薬で経験的に有効であることがわかっています。
便秘型に対し大建中湯(だいけん-ちゅうとう)、腹痛の改善には桂枝加芍薬湯(けいしか-しゃくやくとう)などのお薬を使うことがあります。
さらに過敏性腸症候群の原因の一つとして食物アレルギーがあげられており、アレルギー除去食や抗アレルギー薬も有効と考えられています。
過敏性腸症候群は、長引く症状と不安からうつ症状を合併することがあります。
うつ症状が強い場合、腹痛を和らげる作用がある抗うつ薬を用いることがあります。
その場合、純粋なうつ病よりも少ない量で治療を行います。
使用する抗うつ薬としては、パキシルやジェイゾロフトなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と呼ばれるお薬が有効です。
不安が強い患者さまには、リーゼやワイパックスといった、ベンゾジアゼピン系抗不安薬を用いることもあります。
ただし、抗不安薬は依存性の問題もあり長期間の使用は慎重に行います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回のブログでは下痢と新型コロナウイルスの関係、過敏性腸症候群(ストレス性胃腸炎)についてご紹介しました。
ご紹介した通り、下痢の診療には経験と知識が必要です。
大阪の堺なかむら総合クリニックは消化器専門のクリニックのため、下痢や便秘が続いて困っている患者さんは、お気軽に当院にご相談下さい。
当院では下剤を飲まずに大腸カメラを受けられる「下剤を飲まない大腸内視鏡検査」を行っています。
大阪の堺なかむら総合クリニックまでお気軽にご相談ください。
「過敏性腸症候群は大腸内視鏡検査で異常がないことを確認してから、お薬で治療します」