腫瘍マーカー抗p53抗体が引っかかる理由とは?
がんの検査といえば、胃カメラや大腸内視鏡検査、CTなどをイメージされるかもしれませんが、もっと簡単に診断できたらいいですよね。
採血や尿検査で簡単にがんの診断ができないの?
と思う方もおられるかもしれません。
さて、今回のブログでは、血液検査や尿検査で簡単に検査でき、がんの診断に役立つ「腫瘍マーカー(がんマーカー)」、特に代表的なCEAとCA19-9、さらに最近話題の抗p-53抗体について説明したいと思います。
また、抗p-53抗体の数値が高くて引っかかる人はその理由についても説明します。
腫瘍マーカーのことを知らない方にとっても、わかりやすく解説していきます。
それでは、早速どうぞ!
(本稿は消化器病専門医の中村孝彦医師が執筆しています)
「採血だけで癌が見つかったらいいですよね。最新情報をお届けします!」
腫瘍マーカーの精度とは?
腫瘍マーカーとは、がん細胞がその進行とともに作り出すたんぱく質やホルモンや酵素のことを言います。
ただし、この物質はがん特有なものではなく、健康な人でも少しは血液中に存在し、肺炎や肝炎などの感染症でも数値が上がることがあります。
しかし、体の中にがんができると、通常それほど変化しない腫瘍マーカーの数値が高くなることがあります。
また、腫瘍マーカーは癌の勢いを反映していることがあり、進行した癌に対して治療が行われる時に、治療がどれくらい効いているかどうか、再発しているかどうか、の判断にも用いられます。
腫瘍マーカーは、50以上発見されており、それぞれの腫瘍マーカーによって、陽性になりやすい臓器が異なり精度も違います。
検査は、がん細胞から血液や尿に産生される物質の量を測定するので非常に簡便で、身体に負担のかからない検査です。
腫瘍マーカーは人間ドックや健康診断でオプションで受けることもできます。
腫瘍マーカーの多くは進行癌で多量に産生されるため、早期がんではマーカーが血中に産生されていないことも多いです。
しかし、最近、抗p-53抗体など、早期がんの検出精度が高いマーカーも発見されて、保険適応となっており、進歩している分野でもあります。
今や、日本人の2人に1人は生涯のうちで癌にかかるという時代ですが、その中でも胃や大腸といった消化器系の癌が50%以上を占めます。
次の項から、癌の大半を占める消化器系の癌で良く使われるマーカーである、CEA、CA19-9、SCC、そして早期がん診断に有用な抗p-53抗体の精度について解説していきたいと思います。
腫瘍マーカーCEAの精度
CEA(しーいーえー)は腫瘍マーカーの中で最も代表的なマーカーです。
実際の医療現場でも最も沢山、計測されているマーカーです。
様々な癌で上昇するマーカーで、癌の活動性をよく反映します。
CEAの陽性率は、大腸がんで70%、胃がんで60%、膵臓がんで60%と消化器系の癌で特に高くなります。
肝炎や腎不全、糖尿等などの良性の病気でも腫瘍マーカーが陽性になることがありますが、この場合の数値は大抵、高くなりません。
また、タバコを吸っている方で陽性になることもあります。
いずれにしても、CEAが陽性になったら、がんの可能性を疑って、内視鏡検査や超音波検査(エコー)、CT検査などを受けることが重要です。
腫瘍マーカーCA19-9の精度
CA19-9(しーえー ないんてぃないん) は、膵臓や胆道系の癌で陽性になるマーカーです。
膵臓癌での陽性率は 90%と高く、胆道系癌で80~40%、胃癌や大腸癌で30%程度と消化器系の癌を中心に陽性になります。
CA19-9も肝硬変や胆石などでも陽性となる(偽陽性)こともありますが、やはり油断は禁物です。
CA19-9が陽性と言われたら、腹部エコーやCT検査で、膵臓や胆のう、胆管をチェックしましょう。
早期がんでも発見!抗p-53抗体って知ってますか?
抗p-53抗体(こう ぴー53こうたい)という腫瘍マーカーをご存知でしょうか。
聞きなれないと思いますが、抗p-53抗体は、これまでの腫瘍マーカーと違い、早期癌の発見に役立つとして今、注目されている癌マーカーなのです。
特に早期の食道癌や大腸癌の発見に有用なマーカーで、これらの癌の約30%の患者さんで陽性となります。
この「早期癌(ステージ1もしくはステージ2)」の状態で発見できる、というのが従来の腫瘍マーカーでは考えられなかった画期的なことです。
特に食道がんは進行すると、食道や周りのリンパ節ごと取り除く7-9時間にも及ぶ大手術が必要です。
手術に関連して1-3%の方が亡くなられ、声が出せなくなることもあるという、身体にも大きな負担がかかる治療が必要になるのです。
また食道がんの術後には多くの方が、食事があまり取れなくなり10kgから20kgくらい体重がおちてしまいます。
また、それだけの大手術をしても抗がん剤が必要になったり、再発に苦しむことも少なくないのです。
一方、早期がんの状態で発見できると、食道や大腸の臓器を完全に温存し、癌の部分だけを切除する内視鏡治療を行えることが多く、根治(再発がないこと)も目指せます。
これは、患者さんにとっては非常に価値があることですよね。
癌の治療は、手術して終わり、ではなく、癌との闘いの始まりに過ぎないので、やはり根治を目指したいと誰もが思うはずです。
話を戻します。
これまでお話した通り、抗p-53抗体は優れた腫瘍マーカーなのですが、もう一つの特徴があります。
抗p-53抗体は、他の腫瘍マーカーと陽性率の重なりが少ないため、複数の腫瘍マーカーを組み合わせることで陽性率が上がるのです。
例えば、大腸がんですと、抗p-53抗体単体での陽性率は30%程度ですが、抗p-53抗体とCEAを組み合わせた場合、陽性率が60%まで上昇するのです(大腸がんのうち、抗p-53抗体とCEAのいずれか一方が陽性になるのは約60%)。
このように、最近は腫瘍マーカーも色々発見されており、精度も上がってきているため、血液検査だけでも分かる情報は増えてきています。
また、抗p-53抗体の数値がずっと高くて引っかかる人が一定数おられますが、これは検査の「偽陽性」によるものです。
どんな検査も100%の精度ということはありえなく、必ず一定数、体に癌などがなくて問題ないのに検査で引っかかる人がいます。
こういった人は、一度、CTや内視鏡検査などの精密検査をうけて異常がないことを確認できた後、定期的な採血で数値だけをフォローしていくのが一般的です。
数値の上昇がなければ経過観察。
もし、数値が持続的に上昇してきたら、再度、精密検査を行う、といった流れになります。
腫瘍マーカーが陽性と言われたらどうする?
では、腫瘍マーカーが陽性と言われたらどうしたらいいのでしょうか。
次にどんな検査方法があるのでしょうか。
何科を受診するかを迷われている方は、癌の大半(50-60%)が消化器癌であることを考えると、まずは消化器科(胃腸科)のあるクリニックを受診するのが良いでしょう。
もちろん、すでに胸にしこりがある、性器から出血がある、等、婦人科などの特定の臓器に症状がある場合などはまずは婦人科を受診しましょう。
何も症状がない場合は、消化器科である可能性が高くなるので、消化器科(胃腸科)などを受診しましょう。
消化器科では、腹部エコーや内視鏡を使った検査を行います。
腹部エコーは、肝臓や胆のう、膵臓といった臓器をチェックし、内視鏡検査は食道や胃、大腸を検査します。
大阪の堺なかむら総合クリニックでは、「下剤を飲まない胃・大腸カメラ」という検査を行っています。
従来、大腸検査をするには、下剤内服の必要がありましたが、「下剤を飲まない胃・大腸カメラ」では、下剤を飲まずに胃カメラ・大腸カメラを半日で受けることができ、食道・胃・大腸を一度にチェックできます。お気軽にご相談ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
血液や尿で測れて非常に簡便なのに、有用な腫瘍マーカー。
最近は、人間ドックや健康診断のオプションで測ることもでき、費用は数千円~のようです。
ただし、症状があったりした場合は保険が効きますので、医療機関で健康保険で測定できます。
もちろん、大阪の堺なかむら総合クリニックでも腫瘍マーカーはいつでも測定できますので、気になる方はお気軽にご相談ください。
「腫瘍マーカーや癌についてのご相談は、堺なかむら総合クリニックにお任せください」