【貧血の緊急対処法】即効性のある応急処置とは?

立ちくらみなどの貧血症状でお困りの方へ。

 

突然、貧血になったらどうすればいいのでしょうか。

 

このブログでは、貧血の応急処置・即効性のある緊急対処法、さらには貧血の裏に隠れている怖い病気、特に「がん」などの怖い病気の可能性についても、お話したいと思います。

 

それでは早速どうぞ!

(この記事は消化器病専門医の中村孝彦医師が執筆しています)

「女性に多い貧血。でもその裏に「がん」が隠れていることもあるので要注意です!」

 

【ブログ目次】


1.貧血になったらどうすればいいの?

2.【貧血の緊急対処法】即効性のある応急処置とは?

3.貧血に良い食べ物で即効性のあるものは?

4.貧血に隠れた怖い原因!大腸がん・胃がん!

1. 貧血になったらどうすればいいの?


 

貧血と聞いてどのような症状をイメージされるでしょうか。

 

貧血の症状は、多くの方のイメージ通り、「立ちくらみ」「めまい」「ふらつき」「息切れ」といった症状になります。

 

なぜこういった症状がでるのでしょうか。

 

貧血とは、体に酸素が足りていない状態です。

 

人間が鼻や口から吸った息に含まれる酸素は肺から血液に取り込まれます。

 

血液に取り込まれた酸素は、赤血球の中にある「ヘモグロビン」によって体の組織の隅々まで運ばれます。

 

貧血というのは、この運び屋であるヘモグロビンの濃度が低くなり、体に酸素が足りなくなる状態なのです。

 

貧血は男性よりも女性に多い多い病気です。

 

これは、女性が月に1回、月経(生理)があるからだと考えられており、ある統計によると20代から50代の女性の65%に貧血症状があるようです。

 

実際、なにも症状のない健康な男性のヘモグロビン濃度が14-18 g/dlなのに対して、女性のヘモグロビン濃度は12-16 g/dlと平均で2 g/dlほども低くなっているのです。

 

さて、実際に貧血になったらどうすればいいのかを次の項から詳しく解説していきます!

2.【貧血の緊急対処法】即効性のある応急処置とは?


応急処置・緊急対処法が必要な貧血の症状としては、失神(一時的に意識を失うこと)やめまい、立ちくらみといった症状です。

 

これらは全て、脳に酸素が足りていない状態で生じる症状です。

 

これらの症状を感じたら、まず初めできる緊急対処法は、その場にしゃがんだ体勢とすること、そしてできるだけ安静にして酸素の消費量を抑えることです。

 

屋内など、周囲が安全で横たわれるシチュエーションなら横になり、応急処置として下図のようなショック体位の体勢とします。

ショック体位とは、足を頭より15cmから30㎝ほど高くした体勢のことです。

 

こうすることによって、下半身の血液を脳や内臓に送ることができます。

 

貧血で立ちくらみや失神がおきているときは、血圧も下がっていることが多いのですが、その際にもこのショック体位が有効です。

 

ショックとは医学用語で、「血圧が下がっている」という意味です。

 

この時に、ズボンのベルトや着ている服のボタンを外したりしてゆるめましょう。

 

着衣がきついと、呼吸がしづらかったり、血圧が下がりやすかったりします。

 

余裕のある方は、橈骨動脈(とうこつどうみゃく:手首の親指側にある動脈)や頸動脈(けいどうみゃく:首の動脈)を触れることで大体の血圧が分かります。

 

一般に橈骨動脈が触れづらいと、血圧が80mmHg以下、頸動脈が触れづらいと血圧が60mmHg以下と言われているので参考になります。

 

何かかけるものがあれば、体を冷やさないように掛けてあげるとよいでしょう。

 

また、吐き気を訴えている場合は、吐物で窒息しないように顔を横に(左など)向けてあげると良いです。

 

逆に失神や立ちくらみのシチュエーションで、やってはいけないことはなんでしょうか。

 

それは水などの飲み物を飲ませることです。

 

え、血圧が下がってるんだから水分を取らせた方がいいんじゃないの?、と意外に思われる方もいるかもしれません。

 

しかし、失神や立ちくらみで意識がもうろうとしている時に無理に水を飲ませると、誤嚥といって胃ではなくて肺の方に飲み物が入ってしまって、最悪窒息することもあるので危険です。

 

また、体が酸素不足のときに、無理に胃腸を働かせると、酸素消費量も増えてしまいます。

 

緊急時の対処法は、横になって、救急車などの到着を待ち、後は医療者に任せるのがベターです。

 

病院などでは、点滴を取って、必要な水分などは直接血管に入れる方法を取るため、安全なのです。

 

3.貧血に良い食べ物で即効性のあるものは?


貧血の原因として最も多いのは鉄欠乏貧血といって、ヘモグロビンの材料となる鉄分が不足して起こる貧血です。

 

鉄不足の予防には、鉄が多く含まれる食品を摂るのがおすすめです。

 

鉄が多く含まれるのは鶏レバーや豚レバー、豚ヒレ肉、牛サーロインなどがあります。色が赤い肉類は鉄分が豊富なイメージを持っていただいて大丈夫です。

 

レバーは体に吸収されやすい「ヘム鉄」が豊富なだけでなく、血液を作る際に必要な葉酸やビタミンB12も含んでいるため、貧血にとって優れている食材です。

 

レバーの食べ方としては、まず、感染の面から生食はやめましょう。レバーは中心部までしっかり加熱することが重要です。

 

レバーをおいしく食べるには流水での血抜きと、牛乳などに漬けることで臭みとりが重要です。

 

レバニラ炒め、みそ炒め、生姜煮などが相性が良いので、手軽なレシピとしておすすめです。

 

成人女性に必要な1日あたりの鉄量は11mgなのですが、鶏レバーには100gあたり9.0mg、豚レバーには100gあたり13.0mgの鉄が含まれており、100g食べるだけで1日の必要量を補えてしまいます。

 

他に、豚ヒレ肉や牛サーロインなどの赤身肉もヘム鉄が豊富な食材ですが、火を通しすぎると固くなり食べにくくなってしまう食材なので注意しましょう。

貧血予防のために控えたほうが良い物としては、緑茶、紅茶、ウーロン茶、コーヒーなどタンニンを含む飲み物です。

 

これらの飲み物を食事中や食直後に摂取すると、タンニンが鉄と結合して鉄の吸収を悪くするので注意が必要です。

4.貧血に隠れた怖い原因!大腸がん・胃がん!


貧血の原因を分類すると大きく、①ヘモグロビンを作れない、②ヘモグロビンが体から出ている、の2つに分かれます。

 

ヘモグロビンというのは身体に酸素を運搬する運び屋さんのことでしたね。

 

①ヘモグロビンを作れない

 

鉄欠乏性貧血

ヘモグロビンを作れない原因として最も多いのは、「貧血に良い食べ物」の項で述べた「鉄欠乏性貧血」です。

 

他にも亜鉛やビタミンB12、葉酸といった栄養素が足りなくても貧血になります。

 

妊婦さんなどは、いつも通り食事を食べていても、必要な栄養量が増えているために、相対的な栄養不足となり貧血がおきることがあるので、鉄・亜鉛・ビタミンB12などを含んだマルチビタミンや葉酸のサプリを飲んで補充することが大切です。

 

他にもお酒の飲みすぎや、胃炎や胃潰瘍などの病気、胃の手術後でも鉄欠乏性貧血になることがあります。

 

鉄欠乏性貧血は病院の血液検査で値をすぐに測ることができます。

 

鉄欠乏性貧血はよくある病気ですが、ちゃんと食事をしているのに貧血になる時は要注意です。

 

胃がん・大腸がんなどの癌が体にある場合は、微小な出血により鉄不足に陥ることがあるのです。

 

鉄欠乏性貧血と診断されたら、「じゃあ、鉄分をよく含んだ食事をとったらいい」「鉄剤の薬をのもう」と対症療法に走るのは危険です。

 

その鉄不足の裏に潜んだ胃がんや大腸がんを見逃さないように胃カメラや大腸カメラでスクリーニングをしなければなりません。

 

胃カメラや大腸内視鏡検査で何もなかった時に初めて、対症療法(鉄補充)を行いましょう。

 

骨髄の異常

 

赤血球・ヘモグロビンを作っているのは、骨の中にある骨髄という臓器です。

 

白血病などの骨髄の病気や、腎臓が悪くなって骨髄に働きかけるホルモンを出せなくなると、骨髄で赤血球を作れなくなってしまい貧血になるのです。

 

これらの病気は、貧血の値以外にも白血球や血小板、クレアチニンといった、他の血液検査値にも異常をきたしているため、血液検査だけでも比較的簡単に診断ができることがあります。

 

②ヘモグロビンが体から出ている

消化管から慢性的に出血していると、ヘモグロビンがどんどん消化管から体の外に出ていくため貧血になります。

 

胃や大腸といった消化管からの出血というと、便器が真っ赤になるような血便を想像されるかもしれません。

 

しかし、微量の出血だけ続いている場合は、便の色はほとんど変わらないか、少し黒っぽくなる程度なのです。

 

微量の出血の場合、「便潜血検査(検便)」でごくわずかな出血を拾い上げるしかありません。

 

消化管からの出血の頻度として多いのは、胃がんや大腸がんといった悪性疾患、胃潰瘍や潰瘍性大腸炎といった良性疾患があります。

 

また、出血がおきていなくても、癌は身体の中に存在しているだけで、骨髄で赤血球を作る働きを抑制するため、貧血に気づいたら、癌の可能性を否定しないと手遅れになってしまうかもしれません。

貧血:まとめ


いかがでしたでしょうか。

今回のブログでは「貧血」について詳しくご紹介しました。

 

大阪の中村診療所・内視鏡内科では、下剤を飲まずに(下剤なし)で胃カメラと大腸内視鏡検査を同時にできる「下剤を飲まない胃・大腸カメラ」を行っています。

 

貧血気味で不安な方は、是非、ご相談ください。

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「貧血で心配な方はお気軽にご相談ください」

この記事を書いた人

Dr.Taka|中村 孝彦 医師
Dr.Taka|中村 孝彦 医師中村診療所・内視鏡内科 副院長
消化器病専門医|消化器内視鏡専門医|認定内科医

大阪大学医学部卒。住友病院、JCHO大阪病院を経て、大阪国際がんセンターで消化器癌の内視鏡手術を担当。現在、下剤を飲まない大腸検査・無痛内視鏡を行う中村診療所副院長。「抗血栓薬の特徴と内視鏡時の対応:エキスパートに学ぶ安全で楽な外来内視鏡」など著書・論文多数。

『女性医師が常勤の当院は女性の方でも安心です。以下の地球マークのHPリンクから、お気軽にHPをご覧下さい!』