【腸閉塞になりかけの初期症状とは?】医師がブログ解説!

腸閉塞(ちょうへいそく)という病気をご存知でしょうか。
初めて聞いたという方も多いかと思います。
腸閉塞とは簡単にいうと、腸(小腸や大腸)が詰まってしまう病気です。
腸が詰まると、便やおなら(ガス)が出なくなるため、腸閉塞になりかけの初期症状としては、「おならが出ない」「便が出ない」といったものが出てきます。
おならが出なくて困っている人は、ただの便秘ではなく、腸閉塞になっている可能性があります。
このブログでは、腸閉塞になりかけの初期症状・原因・食事などの予防について、どこよりもくわしく解説します。
それではどうぞ!
(本記事は、消化器病専門医の中村孝彦医師が記載しています)
「ただの便秘と油断していると腸閉塞になることも!」
【ブログ目次】
1.腸閉塞になりかけの症状とは?
便秘が続いていて、おならが出ない(ガスが出ない)、お腹全体が張ってチクチク痛い、気分が悪い、吐き気がする、長い便秘があるの症状があるときは、腸閉塞の初期症状・前兆の可能性があります。
2.腸閉塞でおならは臭くなる?ブログで医師解説!
腸閉塞になると、便やガスが完全に出なくなるのですが、腸閉塞に至っていない、なりかけの状態(サブイレウスといいます)では、腸の中で大腸菌などの腸内細菌が繁殖し、おならが臭くなる可能性があります。
他に、動物性たんぱく質や動物性脂質を取り過ぎても、おならが臭くなることがあります。
3.腸閉塞の原因は?
腸閉塞の原因としては、大腸がんや大腸ポリープがあって腸の中に溜まったおなら(ガス)や便の流れが悪くなってしまった可能性があります。
他に考えられる原因としては、お腹の手術をした後に腸がお腹の壁にくっつく「癒着(ゆちゃく)」という状態を起こした場合(癒着性腸閉塞;ゆちゃくせい-ちょうへいそく)や、ガスや便を送り出す腸の機能が悪くなり、機能的に腸が動かなくなってしまった場合(麻痺性腸閉塞;まひせい-ちょうへいそく)があります。
また、脂物などの食べ過ぎやストレスも腸閉塞の原因となります。
揚げ物などの脂肪分の多い食事は、炭水化物などの消化の良い食事に比べて、腸管の中での滞留時間がながく、宿便の原因になります。
ストレスがかかった状態や、過労の状態だと、腸の動き(腸蠕動:ちょうぜんどう、といいます)が悪くなるので、便やおならが滞留し、腸閉塞を引き起こすことがあります。
この中でも特に、冒頭に述べた大腸がんや大きい大腸ポリープによっての流れが悪くなっている場合は、癌やポリープ自体が命取りになる場合があります。
4.腸閉塞の診断は?
腸閉塞の診断は、お腹のレントゲン検査で行います。
上の写真は、お腹のレントゲン写真ですが、矢印で示した黒い影の部分が全て、腸閉塞によって異常に拡張した腸管(この写真の場合は小腸)になります。
正常な状態でも、お腹のガスはレントゲンで映るのですが、レントゲンで見える腸管の拡張が、概ね小腸で3cm以上、大腸で6cm以上みられると、腸閉塞の診断となります。
腸閉塞でお腹の動きが停止することで、下の写真のように腸に溜まった腸液が喫水線のように、黒い影の中に定規で引いたような横線のラインがレントゲンで映ることも多いです。
5. 腸閉塞の治療方法を教えて!
腸閉塞になってしまうと、どうなるのでしょうか。
腸閉塞の治療には、内科的治療と外科的治療(手術)があります。
内科的治療としては、まず、止まった腸の動きを改善するために、腸を動かすお薬を使います。
具体的には、大建中湯(だいけんちゅうとう)や、モサプリド(ガスモチン)というお薬を使います。
大建中湯は腸を動かすだけでなく、動きの悪くなった腸の血流を良くする働きもある、腸閉塞にとても良いお薬です。
内服のお薬だけで限界がある場合は、お腹に溜まった便やガスを外に出すための長い管を鼻やお尻から入れたりします。
この管のことをイレウス管といい、3mもの長さの長い管で、例えば小腸の腸閉塞だと、鼻からこの管を入れて、腸が詰まっている場所まで先端を届かせます。
イレウス管は、下のレントゲン写真で白く映っている管です。
その状態で管の先から陰圧をかけて、腸が詰まってしまったことで貯留したガスや便を外に吸い出します。
イレウス管は長い管で先端を小腸に置くのですが、その代用として胃管という短めの管を入れて、先端を胃に留置することもあります。
イレウス管よりは効果が弱いですが、軽症の方では有効なこともあります。
内服療法やイレウス管といった内科的治療で腸閉塞の改善が見られないときは、外科的な治療(手術)を行います。
お腹の手術を過去に行ったことのある人は、手術のときにできた傷が治る過程で腸がおなかの壁に くっついてしまうことがあります(癒着;ゆちゃく、といいます)。
外科的な治療介入として、この癒着している部分を手術ではがす癒着剥離術(ゆちゃく-はくりじゅつ)があります。
通常、腸閉塞の外科治療はこの方法でうまくいくのですが、腸閉塞が重症化したりして閉塞した腸の部分の血流が悪くなった場合は、血流が悪くなった部分の腸を切除する手術を行うこともあります。
腸閉塞は放置すると、腸穿孔と言って腸に穴が開いてしまい、命に関わる場合もあります。
甘く見ずにしっかりと治療することが大事です。
6.腸閉塞で死亡する確率は?
関ジャニの大倉忠義さんなども患った腸閉塞ですが、実は死亡率の高い病気なのです。
全国集計によると、腸閉塞での死亡率は全体で約7%となっています。
原因別にみると、過去の手術歴などが影響する癒着性腸閉塞の死亡率は約1.5%なのに対して、癌による腹膜炎などが原因となる癌性腸閉塞の死亡率は約40%と原因によってもかなり異なります。
いずれにしても、死亡率の比較的高い、怖い病気ということが分かりますね。
7.腸閉塞の入院期間は?
腸閉塞の入院期間は、短期間の絶食や、内服療法だけで良くなる場合は1週間以内となります。
しかし、イレウス管を入れたりする場合は2週間以上となり、外科手術が必要な場合は3週間以上になることもあります。
いずれにしても入院期間が数日以内となることは少なく、腸閉塞は再発も多い病気のため、腰をすえて治療を行う必要があります。
8.腸閉塞の予防に良い食事のレシピは?
腸閉塞の予防に良い食事のレシピは、消化に良いものです。
私はいつも、「白いものが消化に良いですよ」と説明しています。
白米、豆腐、白身魚、うどん、ヨーグルト、大根など、白い食べ物で思い浮かぶ食べ物は概ね消化に良い食べ物といえます。
また、腸閉塞にならないためには日ごろから食事以外の生活習慣にも気をつける必要があります。
水分をしっかりとって便秘にならない習慣づくりはもちろんですが、運動を習慣づけることが大切です。
人間がガスや便を送り出すには、腸の力だけではなく腹筋など様々な力を使っています。この筋力を落とさないようにすることが重要なのです。
【 まとめ 】
いかがでしたでしょうか。
今回のブログでは、腸閉塞について解説しました。
日頃、慢性的な便秘を抱えている方や、過去にお腹や婦人科の手術をしたことのある人は腸閉塞のリスクです。
また、大腸がんや大腸ポリープも腸閉塞の原因となることがあります。
大阪の中村診療所・内視鏡内科では、腸閉塞予防の慢性便秘の治療や、大腸がんや大腸ポリープの大腸カメラを使った内視鏡的切除(お腹を切らずに治療)に積極的に取り組んでいます。
慢性便秘でお困りの方や、腸閉塞のリスクが気になる方はお気軽にご相談ください。
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当院では「下剤を飲まない大腸内視鏡検査」も行っているので、下剤を飲むのが苦手で大腸内視鏡検査を敬遠している方も是非当院までご相談ください。
腸閉塞のことを詳しくなかった方にとってこのブログが参考になれば幸いです。
「慢性便秘の方はお気軽にご相談を」
この記事を書いた人

- 中村診療所・なかむら内視鏡センター 副院長
-
消化器病専門医|認定内科医
大阪大学医学部卒。住友病院、JCHO大阪病院を経て、大阪国際がんセンターで消化器癌の内視鏡手術を担当。現在、下剤を飲まない大腸検査・無痛内視鏡を行う中村診療所副院長。「抗血栓薬の特徴と内視鏡時の対応(消化器内視鏡33)」等の著書多数。
『女性医師が常勤の当院は女性の方でも安心です。以下の地球マークのHPリンクから、お気軽にHPをご覧下さい!』
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