【血中酸素濃度の正常値は?】パルスオキシメーターを読む!

最近、コロナでパルスオキシメーター(血中酸素計)の使用が急増して生産が追いつかない、とニュースになっていましたね。

 

ところで、パルスオキシメーターで計測する血中酸素濃度の正常値って皆さんご存知でしょうか。

 

病院などで、「酸素の値をはかりますね」などと指先に機械をつけられた経験はあるかもしれませんが、詳しくない方もおられるかと思います。

 

今回は、血液中の酸素の状態をはかり、時に命にかかわる判断に重要となる「パルスオキシメーター」について、できるだけ簡単にわかりやすく解説したいと思います。

 

また、パルスオキシメーターの選び方や、表示される値の正常値、使い方についても徹底解説します。

 

それでは早速どうぞ!

(本稿は消化器病専門医認定内科医の中村孝彦医師が執筆しています)

「手軽に貴重な情報が分かる『パルスオキシメーター』。現場でも重宝しています!」

 

【目次】


1.血中酸素濃度の正常値は?
2.パルスオキシメーターの使い方の解説ブログ

3.パルスオキシメーターのおすすめの選び方【2021】

4.血中酸素濃度・心拍数についてさらに詳しく!

1. 血中酸素濃度の正常値は?


まず、パルスオキシメーターとは何かを医師がわかりやすく説明します。

 

パルスオキシメーターとは、一言でいうと「全身に酸素が届いているかを調べる装置」です。

 

一般的なパルスオキシメーターは、%(パーセント)の数字で表される酸素飽和度(ほうわど)と呼ばれる数字が表示されています。

 

まず、この、%(パーセント)の数字で表される酸素飽和度について説明します。

 

例えば新型コロナウイルスで考えると、概ね以下のようにとらえて頂いて結構です。(詳細が知りたい方は、チャプター4をご覧ください。)

<パルスオキシメーターに表示される数字(%)>

96-100%正常値
94-95%息切れを自覚、要注意
90-93%酸素投与が必要、入院を検討
89%以下危険水準

 

%で表示されると、なんとなく、70-80%もあれば合格なんじゃないの? 

 

と感覚的には思われると思いますが、そうではないのです。

 

詳しく解説すると長くなるので割愛しますが、酸素飽和度の%は、血中酸素濃度を表したものではないので注意が必要です。

 

とにかく、

「パルスオキシメーターに表示される%は、90%を切ったらヤバい!」

 

と、これだけをまずは覚えておいて下さい。

 

この基準は、コロナに関わらず、全ての病気で当てはまります。

 

パルスオキシメーターは、この生命にとって非常に重要な情報を、指にはさむだけ(つけるのに3秒程度)で分かる、非常に優秀な機械といえます。

2.パルスオキシメーターの使い方の解説ブログ


パルスオキシメーターの使い方は、拍子抜けするほどシンプルです。

 

電源を入れた後、上図のようにクリップ部分をつまんで、機械の指ホルダーに指を奥まで入れるだけです。

 

これで、数秒もすれば酸素飽和度の%と脈拍数の結果が表示されます。

 

え、それだけ?

 

という感じですよね。

 

そうなんです。こんなにシンプルなんです。びっくりですよね。

 

ちなみに指は、人差し指で測定することが多いのですが、どの指でも大丈夫です。

 

向きは、指の爪がある方向を機械の上の方向に向けます。

 

注意点としては、脈拍が安定しないと正確な値が出ないので、装着してから20-30秒体を動かさずに待った後の値を読むのが良いです。

 

また、冬場などで手先が冷えている場合も値が出ない場合があるので、手先が冷えている場合は温めてから測定しましょう。

 

女性でマニキュアを塗っている方は測定できないので、マニキュアを塗っていない指で測定するか、マニキュアを外して測定する必要があります。

 

3.パルスオキシメーターのおすすめの選び方【2021】


さて、これまで、簡便な割にその有用性について解説してきましたが、実際にパルスオキシメーターを購入する時のポイントについて説明します。

 

最近はコロナの拡大で、一家に一台のように、個人でも購入される方がおられるようなので、気になるポイントですよね。

 

一口にパルスオキシメーターといっても、今回の記事の写真でお見せしたような、指先につけるクリップとモニターが一緒になったタイプの他クリップにコードがついていてそれに小型モニターや、病院で使うような大型液晶モニターを備えた固定タイプのものまであります。

<コード付きタイプ>

<大型液晶モニタータイプ>

 

価格も5000円~10万円とかなり幅広くあります。大手メーカーでいうとオムロン社やテルモ社が販売していますが、様々なメーカーから販売されており、Amazonなどでも購入できるようです。

 

さて、様々なタイプがあるパルスオキシメーターの選ぶポイントをお伝えします。

 

まず、メーカーの選び方ですが、パルスオキシメーターは生命に関る重要な情報を得る機械のため、やはりその精度が大事になります。

 

パルスオキシメーターのセンサーの精度が悪いと正確な値が出ないため、測定精度が開示されている医療機器認証を受けた機器を購入するのが良いと思われます。

 

ニュースでもやっていましたが、某国製の格安の製品の一部では、全く正確に測定できないものもあるようなので注意が必要です。

 

次にパルスオキシメーターのタイプですが、個人用に購入し、スポットで計測する分にはクリップ-モニター一体型のもので十分かと思います。

 

一方でクリップ一体型のものは外れやすく長時間つけるのには向いていないので、例えば一晩寝ている間ずっと計測したい、など継続的に測定したい場合は、コード付きのものがよいでしょう。

 

また、病院や酸素ステーションなどのシチュエーションがほとんどだと思いますが、複数人で管理したい場合などは、視認性がよい大型液晶モニタータイプがよいと思います。

 

パルスオキシメーターを選ぶ際は、以上のようなポイントを参考にしてみてください。

4.血中酸素濃度・心拍数についてさらに詳しく!


最後に、パルスオキシメーターをもっと知りたい!もっと使いこなしたいという方に向けてお話したいと思います。

 

まずパルスオキシメーターの仕組みについて説明します。

 

パルスオキシメーターの指ホルダーの部分には、赤い光の出る装置がついています。

 

その光を爪の下にある皮膚の動脈を通る赤血球のヘモグロビンというものにあてて、反射する光を受光センサーが拾って計測しています。

人が空気を吸って肺からとり込まれた酸素は、赤血球のヘモグロビンにくっついて全身に届くのですが、ヘモグロビンは酸素にくっつくと赤くなる性質があります。

 

パルスオキシメーターは酸素飽和度(ほうわど)を測定する機械なのですが、酸素飽和度とはこのヘモグロビンの何%に酸素がくっついているかというのを、この赤くなる性質を利用して調べています。

 

そのため、パルスオキシメーターの%(パーセント)はヘモグロビンと酸素の結合度を表しているだけで、血中酸素濃度を表しているのではないのです。

 

また、下図は「酸素解離曲線」とよばれるグラフですが、

酸素飽和度が90%くらいまでは、体の組織にちゃんと酸素が届いているかの値である「酸素分圧(ぶんあつ)」はあまり下がりませんが、90%を下回ったあたりから、急速に酸素分圧が急降下していくのがお分かりかと思います。

 

そのため、酸素飽和度は70-80%なら合格でいいでしょう、ではなくて、90%というのが絶対的なラインなのです。

 

さて、話は戻りますが、パルスオキシメーターには、この酸素飽和度を表す、%以外にもう一つ数字があるのをご存知でしょうか。

この写真でいうところの64の部分ですね。

 

これは、脈拍、心拍数を表しています。

 

では、この心拍数はどのように解釈すればよいのでしょうか。

 

まず、心拍数がきちんと表示されなかったり、心拍数の下にある波波(~~)の波形が出たり出なかったりするときは、脈拍をきちんと捉えられていないときなので、この場合は酸素飽和度(%)の数字もあてになりません。

 

そのため、指を温めたり、マニキュアをとったり、指を替えてみたりする必要があります。

 

ちなみに、足の指でも測定できますし、裏ワザとしては、耳たぶで測定することもできます。

 

心拍数の正常値は、個人差があるのですが、概ね60~80回/分(1分間に60から80回)と考えて頂いて結構です。

 

この値が高い、例えば100回を超えている場合は、どんな状態を考えたらよいのでしょうか。

 

これは高熱によるものや脱水や不整脈の可能性を考えなければいけませんので、対応が必要になることが多いです。

 

脈拍が高いということは、心臓がそれだけ無理をして頑張っている状態であることが多いのです。

 

この場合、血圧が下がっている場合もあるので要注意です。

 

一方、心拍数の値が低い場合はどうでしょうか。

 

スポーツ心臓の方などでは、心拍数が低い方がおられますが、40回を下回るくらいになると危険です。

 

不整脈の可能性や、全身状態が極めて悪くなっている可能性があるので非常に危険な状態と考えてよいでしょう。

 

ちなみに、パルスオキシメーターは、息苦しい呼吸不全の人の検査以外でも良く使います。

 

例えば当院、大阪の中村診療所・内視鏡内科では、胃カメラや大腸カメラなどの内視鏡検査を麻酔(鎮静剤)を使って検査していますが、その時の患者様の状態のモニタリングには必ず使っています。

パルスオキシメーター:まとめ


いかがでしたでしょうか。今回のコラムでは「パルスオキシメーター」について詳しくご紹介しました。

新型コロナウイルスは、人類の未曾有の難局ですが、みんなで力を合わせて、乗り切りましょう!

 

また、パルスオキシメーターの項でもご紹介しましたが、麻酔を使った胃カメラ・大腸カメラ、下剤を飲まない大腸内視鏡検査を行っています。お気軽にご相談ください。

中村診療所・内視鏡内科の楽な内視鏡

下剤を飲まない大腸検査

「苦しい時期ですが、みんなでコロナを乗り越えましょう!」

 

この記事を書いた人

Dr.Taka|中村 孝彦 医師
Dr.Taka|中村 孝彦 医師中村診療所・内視鏡内科 副院長
消化器病専門医|消化器内視鏡専門医|認定内科医

大阪大学医学部卒。住友病院、JCHO大阪病院を経て、大阪国際がんセンターで消化器癌の内視鏡手術を担当。現在、下剤を飲まない大腸検査・無痛内視鏡を行う中村診療所副院長。「抗血栓薬の特徴と内視鏡時の対応:エキスパートに学ぶ安全で楽な外来内視鏡」など著書・論文多数。

『女性医師が常勤の当院は女性の方でも安心です。以下の地球マークのHPリンクから、お気軽にHPをご覧下さい!』